サイオステクノロジーは6月17日、オープンソースソフトウェア(OSS)のウェブサーバ「Nginx(エンジン エックス)」をベースとした商用版「NGINX Plus」を7月1日から発売すると発表した。リセラー経由で販売され、サブスクリプション価格はオープンだが、「年額数十万円程度になるだろう」(サイオス代表取締役社長の喜多伸夫氏)としている。今後1年間で1000本の導入を目指している。
Nginxは、2002年に開発がスタートし、2004年に最初のバージョンがリリースされたOSSのウェブサーバ。6月17日に開かれた会見の中で、商用版のNGINX Plusを開発するNginxの最高経営責任者(CEO)のGus Robertson氏はNginxについて「ウェブサーバだけでなく、ロードバランサ(負荷分散)やリバースプロキシ、SSLターミネーション、エッジキャッシュ、メディアストリーミングといった機能がある」と、そのメリットを説明する。
Nginx CEO Gus Robertson氏
サイオステクノロジー 代表取締役社長 喜多伸夫氏
サイオステクノロジー OSSテクノロジーセンター長 黒坂肇氏
「Nginxは2012年12月に600万サイトに採用されていたが、現在は1億4000万サイトに採用されている。2013年の成長率は54%となった。トップ1万のウェブサイトのうち39%がNginxを採用している。(IaaS/PaaSの)“Amazon Web Services(AWS)”で稼働するウェブサーバの36%はNginx」(Robertson氏)
Nginxを採用しているのは、動画配信のNetflixやHulu、SNSのFacebook、大手メディアのCNN、写真SNSのPinterest、宿泊できる部屋を共有するAirbnb、クラウドストレージのDropboxやBoxなどさまざまだ。日本でも料理レシピ共有のCookpadやポータルのYahoo! JAPANなどが採用している。
現在のウェブは、ウェブとアプリケーション、データベースの3階層であり、これにロードバランサが加わる。これまでのウェブサーバについてRobertson氏は「レガシーアプローチ」と表現する。これは密結合なアーキテクチャであり、拡張するのが複雑であり、チョークポイントが複数あるために、システム全体として壊れやすいと指摘する。
これに対して、Nginxは疎結合な状態で構成され、管理もしやすいと説明する。「モダンアーキテクチャ」(Robertson氏)であるNginxは、モジュール構成となっている。モジュール構成を取ることで拡張もしやすくなるという。
従来ウェブサーバの反応を高めるためには、ハードウェアのアクセラレータを追加するという選択肢が一般的だ。だが、Nginxではソフトウェアの設定で高速化できるという。
具体的には、クライアントの接続がある一定数を超えるとサーバがパンクする問題、いわゆる“C10K問題”にソフトウェアの設定で対応できるとメリットを説明している。「Nginxの同時接続数と性能はApacheの10~1000倍は向上できる」(Robertson)
商用版のNGINX Plusは、Nginxを中心に先に挙げた機能のほかにアプリケーションのヘルスモニタリング、サーバを出入りするデータのアクティビティモニタリングなどの機能をモジュールで用意している。加えて、サーバを止めることなく、構成を動的に変えることもできるという。
サイオスは、NGINX Plusを発売するとともに、企業向けに電話とメールでのテクニカルサポートを提供、導入を支援するためのサービスも提供する。加えて、日本でのNginxユーザーのために勉強会などのコミュニティ活動もサポートする。
サイオスのOSSテクノロジーセンター長を務める黒坂肇氏は「Nginxの日本展開で障壁となっているのが、日本語での技術情報。これを増やしていきたい。同時に、日本のユーザーからの要求をNginxに伝えていきたい」と今後の方針を明らかにした。