注目が集まる「教育」分野への活用
今回は、社内教育などでのスマートデバイスの活用について、解説していきたい。
これまでに、スマートバイスの活用モデルとして、4つの分類を紹介したが、モデル3(ナレッジ管理モデル)は近年、特に注目を集めている。図に示すように、2011年には社内教育へのスマートデバイスの利用は回答されていないが、2012年には約17%にまで急激に導入企業が増えている。
こうした動きの代表例の1つは、全日空の客室乗務員向けにマニュアルを電子化したというケースだろう 。全日空では以下のように紹介している。「従来の紙マニュアルに替わってiPadを携行し、電子化された最新のマニュアルがいつでもどこでも参照できることから、より安全で安心なサービスを提供できるとしている。研修形式で展開していた教育訓練は、iPadでの自己学習に切り替えて、自習できるようにし、訓練期間を短縮した」――これ以外にも社内教育やトレーニングにスマートデバイスを活用し始めているという事例報告は日々増加している。
学校教育現場での実態
一方で、教育という観点で最も議論が進んでいるのは「文教」領域と言われる学校教育の分野である。2009年12月に当時総務大臣であった原口一博氏は、原口ビジョンの中で2015年度までに「デジタル教科書をすべての小中学校全生徒に配備する」という方針を打ち出している。またその後「教育の情報化ビジョン」なども整備され総務省によるフューチャースクール推進事業が進み始めている。さらに、民間レベルでもiTeachersやiOSコンソーシアム(文教ワーキング)といった団体も立ち上がり、教育にICTをどのように活用していくのかについて真剣な議論が始まっている。
文教領域でのスマートデバイスの導入は、教育のあり方に対する変革への第一歩と言ってもよいのではないかと思う。最近では、一方的に教員が学生に向かって話をする講義スタイルのような受動的な授業形態からの脱却を目指し、図のいわゆる“反転授業(Flip teaching)”という授業形態に注目が集まっている。
反転学習とは、Wikipediaによると「生徒たちは新たな学習内容を、通常は自宅でビデオ授業を視聴して予習し、教室では講義は行わず、逆に従来であれば宿題とされていた課題について、教師が個々の生徒にあわせた指導を与えたり、生徒が他の生徒と協働しながら取り組む形態の授業である」と記述されている。
スマートデバイスの活用は、この反転授業といわれる学習形態への活用方法として、その是非を議論されていることが多い。