具体的には、週1回のミーティングをグローバル規模で開催しています。セールス担当などは移動中のことも多いのですが、Lifesizeクラウドを活用することで空港のラウンジやホテルなどから参加しています。私以外の役員も、同じような形でスタッフミーティングなどを実施しています。
--日本の企業が海外に進出する際に気を付けるべきことは何か。
グローバル企業では、遠隔地でのコラボレーションを可能にするツールの活用が必須だと思います。それを活用していくことによって、個人的な関係も構築でき、文化的に微妙な配慮もできるようになります。
Lifesizeでは米国テキサス州オースチンと、インドのバンガロール、イタリアのミラノに計150人の開発エンジニアがおり、クラウド製品の開発を担っていますが、ビデオ会議を多用して意志の疎通を図り、個人的なつながりを作ることでチームワークを強化しています。メールでのやり取りではこのような関係は得られません。
インドのスタッフは比較的穏やかで控えめな人が多いのですが、一方で、米国スタッフの発言は積極的で大胆です。2つのタイプの人たちを交流させるときに、米国からインドへの渡航費を負担するような余裕はないですし、時間もかかります。かといってメールではアイデアの共有はできるものの、その人となりは知ることができないのです。
文化の違いや性格などを理解することは、想像以上に仕事でも求められるのです。近代的なコミュニケーションツールをもし使わないとすると、生産性やチームビルディングの機能が低下すると考えています。
--CEOとして新しい製品を世に出すとき、どのように決断するか。
新しい製品やサービス、テクノロジを市場に初めて登場させるというのは、科学ではなく芸術の域に入ると思います。消費者の行動を理解し、ユーザーが期待している経験を、今あるテクノロジと掛け合わせて芸術作品として提供するのです。これを今最もうまくやっているのがAppleであり、その部分に最も優れていたのがSteve Jobsだったのではないかと思います。
彼は消費者の潜在的なニーズを、誰よりも早く理解していました。そのニーズと先進のテクノロジを、ハードウェアやソフトウェア、ユーザー体験などとともに最良の形に組み合わせてきました。
われわれは、自分たちを典型的な中規模のグローバル企業だと認識しています。市場の進歩が非常に早いため、その中で何が必要か、コラボレーションテクノロジに何を求めるのかというところから製品を開発しています。もちろん顧客が何を求めているのかを知ることも大事ですし、専門性や、直感、感情などを総動員します。簡単な作業ではありません。
今までにないものを市場に出すときは勇気が必要です。当然ですが成功しないリスクがあるからです。製品開発について面白い言葉があるので引用しましょう。「自分の会社で全員が賛成するようなことは、すでにどこかがやっているものである」
--5年後のビデオコミュニケーション市場について。
ビデオコミュニケーション市場は、今が古いオンプレミスの技術から、新しいクラウドベースの技術へ大きく移行する変革期だと考えます。
引き続きオンプレミスのインフラを購入する顧客は存在すると思いますが、今後の成長は新しいクラウドを使ったコネクテッドデバイスから出てくると思います。われわれの技術も、この市場の加速的な成長を担っていきます。