肝はリーンスタートアップ--「爆速」ヤフーの“スマデバファースト”戦略 - (page 2)

大川淳

2014-06-28 08:00

 そこから最初の“Minimum Viable Product(MVP)”が投入された。このMVPとは、仮説検証のため、最低限必要な要素を備えたものを投入することだ。GPSで正確な位置を記録していたが、バッテリ消費が激しいとの課題が浮上した。そこで、2番目のMVPでは、GPSの代わりに基地局情報を使えるようにして「マニアのための高性能ロガー」だった製品は「ライフログ自動化ツール」に変わった。

 村上氏は「ユーザー体験はあっという間に減衰する。最初が100%とするなら、すぐに50%に低下する」として、最終的な利益につながるのは作業の瞬間値ではなく、作業領域の「積分値である」と強調する。ユーザーの声によく耳を傾け、改良のループを高速に回転させていけば、積分値が大きくなるとの考えだ。

 そこで、事業を回していく基本的な仕組みも改革した。同社は「組織ごとに部署が分かれていたが、サービス単位で20人以下のチームを作り、チームのマネージャーがヒト、モノ、カネの責任をもつ」といった手法が取り入れられた。承認プロセスも従来の8から2に減らした。

 「真の爆速は速すぎて見えない。これが理想だ」。爆速経営は、各方面で具現化されている。同社は2014年度上期、12種のアプリケーションを統廃合し、18種の携帯電話向けサービスを終了させる予定だ。

 ヤフーは、ポータルの覇者としての地位は揺るぎないものの、モバイル向けでは、競合に後れを取っていると認識した。このままではいずれ、それが弱点として、業績にも影響を及ぼすと考え、危機感をもって改革に取り組んだ。

 そこでの基本理念となったのが「爆速」だ。村上氏は「改革を進めてきたが、創業以来変わらないものもある。それはユーザーファーストだ」と述べ、顧客第一の考え方を不動のものと位置付けると同時に、いち早い変革を継続していくとの考えを示した。

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