中国市場は評価の段階
――アジア太平洋地域としてインド、インドネシア、フィリピン、ベトナムを例として挙げられました。その他の巨大な市場として中国があります。中国市場についてはどのように見ていますか?
Raska 中国というのは確かに巨大な市場です。先ほど挙げた4カ国よりも非常に発展した市場であることも確かです。
しかし、中国というのは独特な市場であると思います。例えばソフトウェアに関しては、海賊品などが非常に多いということもあります。それからローカルプレーヤーも大勢いますし、さらに“フリーミアム”といったビジネスモデルの導入も進んでいる市場なので、フリーのウイルス対策ソフトウェアなどが多く配布されているという市場であるということなども考えて、中国市場については現段階では評価しているところです。
だからと言ってビジネスを行わないというわけではなく、もちろん中国でのビジネスもあるのですが、ポテンシャルとして中国市場がどうであるかは正直なところ評価の段階にあります。
要求の厳しい日本市場
――巨大市場であるアジア太平洋地域の中でも、日本は成熟している市場だと思います。他の国とビジネスのやり方に違いはありますか?
Raska 確かに、この地域で技術的にも成熟性という意味でも日本で匹敵するのはオーストラリアだけです。ただ、そうした成熟国についても、われわれはすでにイギリスやドイツといった安定した市場での経験もあります。そういった成熟した市場でのユーザーのニーズ、何を求められているのかといったことについてはこれまでにも経験を積んできています。
具体的に日本市場については、われわれは開発者やエンジニアが年に一度来日し、実際にユーザーと話し合ったり、潜在的な顧客の意見を聞いたりというような機会を設けています。ユーザーの声を聞けるというのは、われわれにとって非常に大きなメリットです。
一方、日本市場の特筆すべき点は、非常にハイテクで先進的であり、いい意味で非常に要求の厳しい市場であると言えます。技術面について代理店や顧客からフィードバックが得られることで、われわれとしても非常に高いレベルの製品を作られると思っています。日本のユーザーというのは非常に優れた世界でも最高のベータテスターでもあります。ということから、ESETは日本とのつながりというのを重要視しています。
ESETアジア マーケティングディレクター Parvinder Walia氏
ラボはシンガポール
――日本市場に焦点を当てると、日本だけを狙った特有のマルウェアに対応するために、日本市場にもマルウェアを解析するような研究施設を置くことで日本企業のユーザーは安心すると思います。現時点での方針はいかがでしょうか?
Raska ウイルスの研究では、われわれは本社にラボがありますが、同時にアジア太平洋の拠点であるシンガポールにもラボを今後拡充していく準備をすでに進めています。シンガポールの施設で本社のラボのサポートをしていこうと考えています。
やはり、その地域におけるマルウェアなどの詳細をより迅速に得るということが重要と考えます。もちろんアジア太平洋でのラボでも、日本というのは非常に優先度が高いが、日本に実際にそのような施設を置くというのは今のところ必要ではないと考えています。
将来的に見直すということはあるかと思いますが、やはり重要なのはタイムゾーンです。今の段階では、本社と違ったタイムゾーンにそのような施設を置く必要がありますし、日本とシンガポールの時差が1時間ということであれば、その時間帯にも施設を持つというのが重要だと思っています。