富士通は7月3日、SAPシステムを最適化するサービス群を「FUJITSU ERPモダナイゼーションサービス for SAPソリューション」として体系化、新サービスとして「SAPトータル診断サービス」と「SAP HANAマイグレーションサービス」の提供を開始した。
ERPモダナイゼーションサービス for SAPソリューションは、ユーザー企業が利用しているSAPシステムの状態を可視化、診断する。サービスの移行や運用方式の設計によるスリム化や最適化を図り、稼働後もサポートすることで、コスト削減やビジネス環境の変化に強い柔軟なシステムを実現できるサービスと説明している。
富士通は1996年からSAPビジネスに参入。日本企業としては唯一、テクノロジ、サービス、ホスティングの3つの領域で「SAPグローバル・パートナー認定」を取得しているという。
富士通グループ全体で、全世界に2800人のSAPコンサルタントを擁するほか、100以上のデータセンターを活用。全世界8000社以上にSAPシステムを提供してきた経緯がある。新体系は、これらの構築、運用、保守のノウハウを生かしたものとなる。
富士通 産業・流通システム事業本部 ERPビジネスセンター長 前村和史氏
富士通 産業・流通システム事業本部ERPビジネスセンター長の前村和史氏は「SAP本社のドイツに富士通も富士通テクノロジ・ソリューションズを持つという背景もあり、長年の付き合いがある。当社のサーバビジネスにとっても、SAPは重要な顧客である」と解説した。
前村氏は「SAPのユーザーの声を聞くと、システムそのものに対する評価を高いものの、運用コストが高いといった課題がある。加えて、M&Aの推進などで拠点ごとにさまざまなバージョンやインスタンス、テンプレートを活用したシステムが乱立している、あるいは、業容や業務の変化に迅速に対応できないといった課題もある」と現状の課題を指摘した。
「情報システムの維持運営コストをモダナイゼーションで低減し、変革や成長に投資を回すことで、競争力を強化するという動きがある中で新たな体系でSAP資産の最適化、グローバル共通の経営基盤の導入、ユーザビリティの高いシステムの導入を可能とすることで、こうした課題を解決できる」(前村氏)
ERPモダナイゼーションサービス for SAPソリューションの体系
性能やプロセスを可視化
体系化にあわせて、同社では2つの新たなサービスを用意した。
トータル診断サービスは、「SAPアプリ業務分析サービス」「システム性能分析サービス」「運用保守プロセス分析サービス」の3つで構成される。
SAPアプリ業務分析サービスは、実際のデータから業務の痕跡をたどることで業務プロセスを可視化し、ボトルネックや滞留プロセスを特定する。システム性能分析サービスは、性能データを収集し、System Inspectorで性能処理能力を分析する。運用保守プロセス分析サービスは、運用保守を構成するITILで管理プロセスや品質、リソースなどを網羅的に分析し、運用保守プロセスの課題と改善策を提示する。
これらを活用することで、ユーザーのビジネス状況やグローバルマーケットの変化を加味し、SAPシステムでの業務プロセスや運用保守プロセス、システム性能を可視化する。分析結果に応じて、それぞれに最適化する各種サービスを組み合わせ、総所有コスト(TCO)削減やコア業務への投資注力、業務やシステム運用の改善などが実現できるという。トータル診断サービスの税別価格は150万円から。
HANAマイグレーションサービスは、統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「SAP ERP」の既存データベースをHANAに短期間、低価格に移行するというサービス。SQL ServerやOracle Database、DB2といったハードディスクベースのデータベースをインメモリデータベースに移行する。SAPが認定したアプライアンスを活用する。
業務アプリケーションをインメモリコンピューティング環境で実行することになり、オンラインバッチ処理を高速化し、迅速な経営判断につなげるという。「DMO(Database Migration Option)」と呼ばれる手法で作業時間の簡略化とダウンタイムの最小化を図れると説明。HANAマイグレーションによるデータベース処理時間の削減とともに、アプリケーションのHANAデータベース最適化による実行時間の削減が図れるという。税別価格は480万円から。