だが、独自に行われた調査のうち、企業が支払うコストについて最も深く掘り下げているのは、Ponemon Research Instituteの「2013 Cost of Data Breach: Global Analysis」(2013年版データ漏えいのコスト:グローバル分析)だろう。
全世界を対象としたこのベンチマークレポートは、Symantecによって実施され、IBMがスポンサーとなっている。このレポートは9カ国を対象としたもので、平均的なデータ漏えいの全体的なコストを求めようとしている。
このレポートによれば、データ漏えいに関する通知コスト、事後対応コスト、機会損失費用が最も高いのは米国の企業だ。
コストの推計やその違いには、さまざまな要因がある。このベンチマークレポートでは、データ漏えいによって企業に生じるコストには、主に検知または発見のコスト、エスカレーションのコスト、通知のコスト、そして事後対応のコストの4種類があるとしている。
企業がさらされる攻撃や脅威は、業種によって違いがある。一部の業種は、ほかと比較して価値の高いデータを持っているためだ。漏えいがあった企業にはまた、データ保護関連の規制や法律に従って、さまざまな罰金が科せられる。
インシデント対応コストには、データ漏えいインシデントの検知およびエスカレーションに関するコスト(例えば捜査および調査業務、被害の評価や監査、危機管理チームの管理)、および経営幹部や役員会へのコミュニケーションコストや報告コストなどがある。
さらに、通知コストがある。これは、被害者に個人情報が漏えいしたことを伝えるコストだ。これには、連絡用データベースの作成、規制で求められるすべての要件の決定、消費者保護に必要なサービスへの関与(ID盗難保護サービスやクレジット使用レポート監視など)、郵送費、郵便や電子メールの差し戻しがあった場合の二次的連絡先の設定、および会社への問い合わせに関するすべてのIT業務が含まれる。
もちろん弁護士費用も必要だ。クレジットカードの交換などに対する補償費用も必要になる。また、機会損失費用も考える必要があり、これには顧客の流出や、「顧客獲得費用の増加、評判の低下、信用の低下」なども含まれる可能性がある。
このように、当機関の調査は、データ漏えいインシデントに伴うマイナスの宣伝効果によって、評判が著しく損なわれたり、新規顧客獲得ペースの激変または低下が起きる可能性があることを示している。
Symantecの2014年のレポートによれば、2011年にはデータ漏えいインシデントで2億3200万件のIDが流出した。そして、2003年にはこの倍以上の5億5200万件が漏えいしている。2013年には、1000万件以上のIDが流出したインシデントが8件起こっている。
このレポートによれば、レコード1件当たりの漏えいによる平均コストは130ドルから136ドルに上昇しているが、「ドイツと米国の組織ではそれぞれ199ドルと188ドルで、より高額だ」という。
このレポートでは「保護されている個人情報の喪失または盗難を経験した企業について」、16業種277企業を対象に調査している。
重要なのは、この調査で示されているコストが仮定のものではなく、実際のデータ漏えいインシデントから得られたものであることだ。
ここには、10万件を超えるデータ漏えいを起こした組織は含まれていない。これらは一般的なデータ漏えいを代表するものではなく、調査対象に含めてしまうと結果がゆがめられてしまうためだ。
(中略)この調査におけるデータ漏えい1件の平均コストは、最悪のケースや巨大なデータ漏えいには適用できない。これは、それらの漏えいは多くの組織が経験する典型的なものとは言えないためだ。