通信のゆくえを追う

NTTの再編論にも与える動き--土管屋かOTTと対決か

菊地泰敏(ローランド・ベルガー) 2014年07月14日 07時30分

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 ご好評いただいたこの連載「通信のゆくえを追う」も今回で一区切りとしたい。最終回は、これまでの連載を振り返ってみるとともに、通信事業者の進むべき方向について考えてみる。

 第1回「競争か協力か--通信キャリア、OTT陣、端末メーカーの微妙な関係」で、通信事業者と端末メーカー、OTT(Over the Top)プレーヤーの競争と協調について述べた。結局のところ、これはID(Identifier :日本語では、識別子と訳されることが多い。より簡単に言えば、個人や回線、端末などを認識するための情報。名前、電話番号、IPアドレスなどがこれに当たる)を誰が持つかという戦いである。

 少し前までは、電話番号(特に携帯電話番号)が有力なIDの地位を占めていたが、時の流れとともに、メールアドレスがそれを駆逐するようになってきた。MNP(Mobile Number Portability)により、電話番号は通信事業者(キャリア)を超えて持ち運べるようになったが、メールアドレスにポータビリティはない。それゆえ、昨今ではキャリアフリーのIDであるOTTのIDが優位に立っているのである。

 第2回「そのサービスは誰のため?--キャリア中心の開発体制が日本のメーカーをダメにした」では、端末メーカーと通信事業者の関係について考えてみた。スマートフォンの普及率が高まってきたことに伴い、そのネガティブサイドに対する論調も厳しくなってきた。その中でも、「ながらスマホ」に対する風当たりが厳しい。

 今後は、こういったネガティブな意見に対し、通信事業者と歩調を合わせて対処策を提案していくことが重要になるであろう(ソフトバンクの「STOP歩きスマホ」など、これに類する動きがあるが、ハードウェアメーカーとの協調も必要である)。

 第3回「OTTの憂鬱--無料でアプリ提供してはみたけれど」では、OTTプレーヤーの実情に迫ってみた。現時点ではわが世の春を味わっているプレーヤーも、必ずしもその事業基盤は頑健なものではない。いたずらに通信事業者と反目する関係になることは両者の利益に適わない。

 第4回「通信キャリアとパケット定額--その光と影」のテーマはパケット定額制であった。日本の通信事業者の課金体系も少しずつではあるが、正常化の動きが見られる気がする。しかしながら、サービスの利用度(ネットワークの利用状況)と支払う金額にリニアな相関があるのがあるべき姿であろう。

 第5回「通信と放送の融合--7年後の東京五輪に向け高まる期待」は放送と通信の融合について考えてみた。さまざまな理由(言い訳?)のもとに、この二者は別の概念で事業運営されているが、技術的にもユーザーの意識の面でも、放送は通信の一形態にすぎない。2020年の東京での五輪・パラリンピック開催を控え、どのように融合を図るのか、国民的な議論が起きてもいいのではないだろうか。

 第6回「オフラインの心地良さかメールチェックの利便性か」ではユビキタスという概念について考えてみた。少なくとも日本国内では、相当なユビキタス性が確保されるようになった。すなわち、国土のおよそどんなところにいても、携帯電話が通じるようになったのである。これに対し、「圏外を買う」という動きが出てきた。とにかく、いつでもどこでも使える状態が良いこと(幸せなこと)なのかどうか、いま一度考えてみる必要があることを述べた。

 第7回「仮想化の光と影」のテーマは通信サービスの歴史とは仮想化の歴史である、ということを述べた。今後もさらなる仮想化技術が提供されるであろうが、仮想化は言葉どおり所詮「仮想」なのだということを忘れないでいただきたい。万能薬のごとく語られる風潮に、少しだけ物申したかったのである。

 第8回「通信キャリアの競争優位性--固定網の優劣がカギ」では、無線(モバイル)ばかりが注目されているが、あくまでも有線のネットワークが充実していてこその無線である、ということを述べた。どんな世界でもそうであろうが、目に見えない、目立たないところにこそ、優位性の源泉は潜んでいる、そういうことをお伝えしたかった。

 そして前回、第9回「通信事業者のビジネスに大きな影響を与える因子について」では規制について述べてみた。通信産業は規制産業であり、特にモバイルにおいては、その事業免許こそが事業展開のために必要な最重要事項であり、逆の言い方をすれば、規制当局のさじ加減で各社の競争環境は大きく様変わりしてしまう、という点を伝えたかった。

 日本国内での競争で疲弊させることなく、国際競争力を付けるという視点が重要であることをお伝えできたであろうか。

 さて、このように通信事業を取り巻くさまざまな状況をみてきたが、今後、通信事業者はどこに進むべきなのであろうか?

 これについては、ローランド・ベルガーではTelco 2020と題して、グローバルスタディを行った。

 簡単に要約すると「通信事業者の生きる道は、ネットワークの提供のみに集中する(いわゆる土管屋になる、ということ)か、OTTと正面から戦うかの2つである」ということである。

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