日本マイクロソフトのチーフセキュリティアドバイザーの高橋正和氏が現在のセキュリティ上の脅威に触れた。
「脅威が高度化することで、サイバークライム、サイバーテロ、サイバーエスピオナージ、サイバーウォーフェアといった動きが出ており、今までの対策では防ぎきれないという状況にある。従来の対策はツールが中心であったが、PCやサーバ、タブレットなどの個々のデバイスをどう管理するかが重要となっている。リース期間の問題などもあり、すぐにはすべてを変えられないというユーザーの声があるが、3年後、5年後にベストな環境は何かということを想定した対策をしていただきたい。攻撃側は待ってくれない。まずは優先順位を付けて、重要性や危険性の高いシステムなど、できるところから進めてほしい」(高橋氏)
日本マイクロソフト チーフセキュリティアドバイザー 高橋正和氏
第一生命保険 コストイノベーションタスクフォース部長 太田俊規氏
Windows Server 2003環境からの移行が完了した第一生命保険がその取り組みの成果を発表した。同社のコストイノベーションタスクフォース部長の太田俊規氏によると、「2013年からスタートした中期経営計画の推進にあわせて、IT武装の強化に取り組み、この9月からはWindows Server 2012 R2を導入し、最新のプライベートクラウドの運用を開始している」という。
「従来のWindows Server 2003/2008から移行することで、コスト削減、拡張性の確保、標準化の推進、運用の高度化を実現している。ラック単位を標準にした構成でシステム更改コストを20%削減できた。物理サーバを500台から160台へと3分の1に、サーバラックは100本から20本台への5分の1へと削減できた。新たな環境に移行することは、大きな価値を得るイノベーションのチャンスである」(太田氏)
日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部長 佐藤久氏
佐藤氏は、「クラウド専業ベンダーの提案は、クラウドへの移行提案のみとなるが、われわれはそうは考えていない。ワークロードごとにオンプレミスで利用した方が最適なもの、クラウドに移行した方がいいものがある。業界特化型のシステムはオンプレミスに移行する企業が多いなど、適材適所での移行を考えてほしい」と提言した。
「今回のサポート終了にあわせて、“P2V(Physical to Virtual、物理環境を仮想化環境に移行させる)”や“P2C(Physical to Cloud、物理環境をクラウドに移行させる)”として、Windows Server 2003を使い続けるという点のは解決策にはならない。セキュリティ問題への対応、問題の切り分け、サポートポリシー、責任範囲などの課題が発生する」(佐藤氏)
その一方で「サポート終了を戦略的にとらえることで、より効率性が高く、より高い信頼性を実現した運用が可能になる」と佐藤氏は提唱した。「たとえば、Windows Server 2012 R2では“Microsoft Azure Site Recovery”としてクラウド上に簡単にデータバックアップを取れる機能がある。オンプレミストとクラウドによるハイブリット型のディスザスタリカバリ(災害復旧、DR)環境が実現できる」(佐藤氏)
Windows Server 2003からWindows Server 2008に移行するというユーザー企業もいる。これに対して佐藤氏は「日本マイクロソフトとしては、Windows Server 2012 R2への移行を推奨したい。Windows Server 2012 R2は、仮想化技術が大幅に改善されており、エンタープライズグレードのスケーラビリティやDR機能を標準で搭載している。重複除去でストレージ利用量を最大80%削減でき、ハードウェア更新の高速化も実現できる。ハイブリッドクラウド環境で同一管理画面からの運用管理も行えるといったメリットがある」と呼び掛けた。
佐藤氏は「部門で購入したサーバもあるので、まずは既存サーバ環境を棚卸しして、移行先の選択、予算とスケジュールの確認をお願いしたい。残りはあと1年。いますぐ移行をお願いする」と改めて強調した。
ワークロードごとに移行先を考えた方がいいという