広島赤十字・原爆病院は、クローズドな業務系と外部と連携する情報系の2系統にまたがるファイル共有システムを構築した。トレンドマイクロが7月14日に発表した。
同院は、電子カルテを導入するなど医療現場のIT化を積極的に進めている。院内のシステムは「診療系」と「情報系」の2系統となっている。
診療系は機密性の高い電子カルテや画像データなどを主に扱い、情報系は事務や医師などが情報収集や外部との連絡に活用している。診療系ネットワークはクローズドな環境のため、Active Directory(AD)と連携して権限管理して運用している。情報系は安全管理の面で課題を抱えていたという。
これまで、病院情報システムで出力したデータを事務系端末や医局の端末へ持ち出す際にはウイルスチェック機能を備えたセキュリティUSBメモリを利用し、各部門の業務ファイルや医師が作成した資料などとともに、それぞれの部署が個別に構築したファイルサーバに保管していた。そのため情報が散在することとなり、目的の情報をすぐ探し出せず、病院システムを統括する医療情報管理課でも情報を一元管理できていない状態だった。
こうした課題からファイル共有システムを検討した。医療機関では厚生労働省発行のガイドラインから海外にサーバを置くストレージサービスの利用が制限されているため、ファイルサーバを自拠点内に持つことができ、安全かつ簡単に業務ファイルをやりとりできるシステムとして「Trend Micro SafeSync for Enterprise」が選定された。
AD連携機能が評価され、導入した。職員の異動や入退職の際も、ADの情報を変更に応じてデータアクセス権限設定などを変更できる。SafeSync for Enterpriseはオンプレミス環境の冗長化された2台の物理サーバ上で稼働、これまで分散していた業務ファイルの保管場所を一元化した。
ファイルのやり取りに加えて、パーソナルフォルダやチームフォルダによるアクセス権や割り当て容量などをIT管理者が集中管理できるようになっている。ファイル共有の際には、ユーザーがメールに添付しファイルを自動的にストレージ保存し、そのリンク情報だけをメールで送信することで安全なファイル管理と情報共有、効率的なサーバ管理が可能となったとしている。
同院は今後、各科や部門のファイルサーバを統合し、院内でのUSBメモリの利用も制限し、安全なオンラインの共有環境を推進する。SafeSyncはマルチデバイスに対応しているため、タブレット端末での活用も検討しているという。

システム構成イメージ(トレンドマイクロ提供)