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“フラット化する世界”から“傾いた世界”へ--Gゼロ後ともう一つの傾き

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2014-07-22 08:00

 いつも釣りに行くと飲む薬がある。エスエス製薬のアネロンである。

 この薬の効能は素晴らしく、必ず船酔いする筆者でも、船の傾きや揺れが全く気にならなくなるのである。つまり、アネロンさえ飲めば、世界はフラットなのだ。

 しかし、いよいよアネロンが効かない大波が押し寄せようとしているようだ。

傾いた世界へようこそ

 Thomas Friedman氏の『フラット化する世界』から8年、Ram Charan氏は「傾いた世界」が現実だと主張する。Friedman氏がグローバル化によって世界がつながっていく様子を表現したとするならば、Ram Charan氏はその結果として、パワーバランスが多くの新興国が存在する南へと傾きつつあることを指摘する。

 つい先週の7月15日にこうした動きを象徴する出来事があった。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)によるBRICS開発銀行と外貨準備基金の創設の決定である。

 これらの機関は、欧米主導の世界銀行と国際通貨基金(IMF)に相当するものである。これは実質G20から5カ国が抜けてG15化するようなものだ。

 そして、G8はすでにロシアが抜けてG7に戻っている。これはまさにIan Bremmer氏が言うところの『「Gゼロ」後の世界』がリアリティとなりつつあることを表している。Gゼロ後の世界は、アメリカなどの主要国が誰一人としてリーダーシップを発揮できず、世界の政治経済が混乱に陥っていく状況を指す。

 ウクライナ、イスラエル、アジアの海洋権益など、アメリカがリーダーシップを発揮できないが故に長期化しているとされる問題は多い。もはや、先進国主導の世界秩序は、政治面においても経済面においても幻想となりつつある。

 しかし、Charan氏は「北側のリーダーたちは現在の世界、今まさに勃興しつつある世界を受け入れられていない」(『これからの経営は「南」から学べ』 P13)と批判する。

もう一つの傾き

 Charan氏は、先進国から新興国へとパワーバランスが傾いていくことを指摘している。もう一つの傾きは、サービスエコノミーからシェアリングエコノミーへのパワーバランスのシフトである。

 サービスエコノミーが企業によるサービス提供によって成立する経済活動であるのに対し、シェアリングエコノミーとは個々人の有する資産や能力の相互提供によって成り立つ経済活動である。

 シェアリングエコノミーはテクノロジとSNSを巧みに組み合わせて、ここ数年で急速な成長を見せている。宿泊サービスのAirbnb、タクシーサービスのUberなどが有名である。

 Amazon.comやGoogleなどのインターネット企業が既存のビジネスモデルを窮地に追い込んだように、これらのシェアリングエコノミー企業もまた、既存のビジネスモデルに対する脅威となりつつある。

アネロンはもう効かない

 しかし、BRICSによる開発銀行の設立に関し、Bloomberg BusinessWeek誌は“The BRICS Don't Need a Bank of Their Own”と題する記事を掲載し、共通点の少ないBRICSが実効性のある開発銀行を運営できるはずがないと批判した。事実、今回の銀行設立にあたっては、BRICSの間での勢力争いも表面化し、その取りまとめには相当な苦労があったと言う。

 また、シェアリングエコノミーに関しても、多くの利便を顧客やサービスを提供する個人にもたらしているにもかかわらず、AirbnbやUberはその合法性を問われ、訴訟などの対応に追われている。

 しかし、このように傾きを否定することはアネロンによる対症療法と同じで、薬の効能が切れるか、あるいは薬が効かないほどに傾きが大きくなったときに悲劇を生むこととなるだろう。新しいビジネスのイノベーションが起きたとき、その表面的な課題を攻撃するよりも、それが登場することになった背景をよくよく理解しようとする努力が必要だろう。

 それが、ちょっとした風によるさざ波であるのか、大きなうねりの始まりであるのかを慎重に見極める必要がある。Charan氏は言う。

国際競争と経済行動の新たなダイナミクスを理解するというのが、南北それぞれのビジネスリーダーに求められる必須条件だ。(前掲書P13)

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