中国ビジネス四方山話

日本も明日は我が身か!?中国の個人情報漏えいを考える

山谷剛史 2014年07月23日 07時30分

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 ベネッセの個人情報漏えい問題が話題になっている。実は筆者の周辺でも中国で中国版こどもちゃれんじこと「楽智小天地」を申し込んだ数日後に、別の教育業者から営業の電話がやってきたという話もある。話題の個人情報漏えいについて中国の事情を書いてみたい。後述するように、日本も他人事ではなくなるのではないかと危惧している。

 中国の掲示板やチャットの画面を見たことがある人は、自分撮りアイコンが多いことを知っているだろう。また、最近では若い女性がウェブカムで自分撮りし、動画サイトで司会と歌手両方を演じる自分の動画を配信するなど、自己アピールに積極的な人が多いように思えるだろう。とはいっても、最近の中国は個人情報漏えい問題がよく報じられるようになり、個人情報漏えいを意識する人が増えている。

 情報は“露骨に”漏れ、日々の生活の中でセールスの電話は頻繁にかかる。子供が生まれれば、出産記念を撮りませんかと写真屋から電話がかかり、車を買えば自動車保険の代理店から、家を買えば保険会社やリフォーム会社から電話がかかる。中国ではメーカー非公認のパソコンやスマホの修理屋があり、便利ではあるが、修理の際には個人情報を含め、様々なデータが勝手に拝借される。芸能人がパソコンを修理に出したことにより、スキャンダル情報が漏れたという事件もあった。

 個人情報の価格は富豪か庶民かによってピンからキリまである。富豪のデータに関しては1件単位から、庶民のデータに関しては数千件、数万件の単位が数百元程度で売買される。現在は2012年末に個人情報売買を禁止する法律が制定され、「非法獲取公民個人信息罪」ができたものの、今だに中国各地で、日々個人情報を数百万、数千万人単位で販売したり、購入した人々が捕まるというニュースが報じられている。

 オンラインでも個人情報漏えいは日々生活していれば感じることだろう。中国の中小のネットショップが無数に集う、中国最大のオンラインショッピングサイト「淘宝網(TAOBAO)」。一部ショップでは、スマートフォンやタブレットを1つ販売しても数十円の儲けしかないとも言われているほど競争は激しく、不動産価格とテナント料はあまり下がらない中で、購入客の個人情報を販売して少しでも儲けの足しにしようという業者は多い。またオンラインショッピングサイトの店員が小銭稼ぎをするように、宅配会社のスタッフもまた、小銭稼ぎのために個人情報をとって販売することをよく聞く。つまり企業としては多くが個人情報を盗むことをよしとはしていないが、スタッフが小銭稼ぎのために悪事を働くことは日常茶飯事だ。

 また最近様々なサービスがオンライン化していく中で、個人情報を取得するための偽サイトが登場するという話題もよく聞く。例えば中国の鉄道切符はオンラインでの購入が当たり前になってきたが、切符をネットで買う風潮にのった偽サイトが登場した。

 もちろんスパムメール、ショートメール、メッセージは日々流れてくる。余談になるが、英語が使えるスタッフが少ない中国企業より、なまじっか英語が使えるフィリピンの企業のほうが、スタッフが英語のスパムメールにひっかかって情報がよく漏れるという意見を聞く。新興国のアウトソーシング力の1つに、スタッフの語学力が挙げられる。しかし語学力があがれば、スパムメールなどにひっかかって情報が漏れるという、悩ましい問題も発生し得るのだ。

 オンラインサービスでの個人情報漏えいで最もよく聞くのが、チャットソフト「QQ」などのインスタントメッセンジャー絡みの漏えいだ。中国人にとって、インスタントメッセンジャーのアカウントはメールアドレス以上に大事だ。中国でのPC普及黎明期からQQは人気であり、公私ともども使われてきた。名刺や広告には、メールアドレスを使わずQQや微信のアカウントの情報を掲載しているものが多い。

 だから10年以上前からトロイの木馬型のウイルスをはじめ、様々な手法でアカウント情報を取得して、アカウントをのっとるというニュースがよく報じられていた。インスタントメッセンジャーの主役がQQから微信(WeChat)に変わりつつある中でも、微信でQQ同様乗っ取られたという話は出ている。加害者はアカウント乗っ取りの後、本来のアカウント主に身代金交渉を行う。

 最近日本で、中国人によるLINEアカウント乗っ取りの話題が出ている。今、日本でもっともメジャーなメッセンジャーが中国を含め世界各国で展開していく中で、中国国内でよく起きていたネット犯罪が中国国外へと波及したといっていい事件ではないかとも思う。ほぼ日本人だけが触れていたネットサービスが世界各国で使われ出すというのはレアケース。日本人が未経験だけれど、中国では当たり前のメッセンジャーの乗っ取りや、個人情報漏えいが、LINE普及とともに増えるかもしれない。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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