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SDNはパラダイムシフトを引き起こす--InfobloxベイリーCTO - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2014-07-24 13:55

――多くの企業がSDNに注力している背景には何があるか。

 理由は2つあると思います。ひとつは、ビジネス要件が以前より増えたことが挙げられます。一番最先端にあるものはプライベートクラウドやネットワーキングであり、そこにモノのインターネット(Internet of Things:IoT)がまさに今、地平線から顔を出しつつある状況です。

 2つ目はコストです。ほとんどの組織ではネットワークに関係する運用コストの効率化を図っています。組織やビジネスの要件がさらに厳しくなっているのです。ムーアの法則に従って考えると、テクノロジがより安価になってきており、こういった2つの事柄がひとつに収束するにつれて、ますますSDNが採用される。その比率も上がっていくと思います。

――SDNが企業にもたらすメリットをどう説明するか。

 ビジネスニーズが、運用コストをより安価にできることだと思います。そしてその運用コストを長期にわたってコントロールしていくことができ、設備投資額が劇的に削減されることになります。これは、実はAmazonやGoogleといった組織が(IaaS、PaaSなどにより)すでに経験していることです。一言で言えばSDNは、AmazonやGoogleが自分たちで作った(IaaS、PaaSのような)サービスがあって、市場全体がそこに向かって動いている状況だと思います。

――SDNがパラダイムシフトを起こすと考える理由は何か。

 私はビジネスがテクノロジを消費することでSDNは拡大に至ると考えています。そこでいろいろな要件が出てきますが、その要件自体が組織を変えていくよう要求する必要があります。今のメインストリーム、大手と言われている企業を見ていると、SDNでまさにそういったことが起きています。興味深いことは、データセンターでSDNを実現するためのオーバーレイ方式に関する戦略です。これを確保できた人たちはアプリケーションやサーバのチームでした。

 ところが一般的なWAN(広域通信網)やLANの分野をみていると、SDNに関する要件はあまり育っていません。最初の重要なユースケースが何になるか、誰も知らない状態なのです。私は(最初のユースケースになるのは)セキュリティ分野ではないかと思っています。攻撃手法がますます洗練されてきているためです。

 ネットワークにはたくさんのサブシステムがあり、それをつなぐひとつのサブシステムがSDNです。そのため、ますます洗練された攻撃に対して、高度な機能を持ったネットワーク上のレスポンスする機能がセキュリティ保護に有効になると思います。

――SDNはどのように発展していくのか。

 OpenFlowも含めたSDNが完全に定着すると、物理的なネットワークハードウェアは存在しなくなるではないかとも考えています。ネットワーク制御がソフトウェアに移行され、基盤となるハードウェアから完全に分離された場合、世界がどのように変化するかを示すためにLINCXを作成しました。

 LINCXは、「Open vSwitch」のようなソフトウェアスイッチです。概要として、CPU上で処理されるリモートのプログラマブルなイーサネットです。イーサネットのインターフェース上でスイッチやルータ、ファイアウォールなどの機能をリアルタイムでリモートからプログラムできるCPUとも言えます。概念的には、基本的なネットワークタスクについては、CPUはASICなどに取って代わることができます。CPUは、ASICなどよりも一般的なもので、ネットワークに対して概念実証的に新しい機能を提供できるものなのです。

――LINCXはビジネスに対して、どのようなインパクトを持つか。

 大規模企業がLINCXを採用する場合には、IoTやビッグデータのアプリケーションが適していると考えられます。IoTのアプリケーションでは、ネットワークにスケーラビリティが求められますし、ビッグデータのアプリケーションでは数百万コアのサーバを有効活用する必要があります。

 LINCXは専用のハードウェアを必要とせず、市販のサーバに加えて、ノーブランドのネットワーク機器で動作するとともに、仮想化環境でも動作しますので、こういった要件を実現するための設備投資をぐっと低く抑えることができます。しかも、非常に高い柔軟性を提供します。従来であれば数百万円から必要であったコストが、数万円に抑えられます。これは大きなインパクトといえます。

 実例としては、たとえば医療組織が患者の血圧や心拍数といったデータを活用するネットワークがあります。これは患者ごとにデータの変化を的確に捉え、最適に処置するためのネットワークです。また、ポンプの圧力などデジタルの情報を常に監視するような油田も実例として挙げられます。

 このようなネットワークには、設備投資を低く抑えることに加え、データの変化を見ながら柔軟に対応していくというオペレーションが求められます。当然、どちらもSDNが必要ですが、LINCXを活用することで設備投資を抑えて運用に注力していくことが可能になります。

 LINCXの目的の1つは、オープンソースSDNアプリケーションのさらなる認知と発展に貢献することです。SDNはオープンな活動の場であり、ネットワーク関連の既存事業者からだけでなく、キラリと光る現在の若手エンジニアたちが将来起業するスタートアップの中からも、多くの勝ち組が出ることを期待します。

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