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アップルのティム・クックCEOが目指すは「運動部のヘッドコーチ」 - (page 3)

三国大洋

2014-07-23 07:30

God Loves Cleveland--Grantland

 この記事を書いたのはBill SimmonsというESPNの有名なライター/コメンテーターだが、そのSimmonsによると、Michael Jordan(“Air Jordan”、Chicago Bullsで6度優勝)は「先導型」で、誰にも真似できないプレイもし、立派な成績も残した一方で、「自分について来られないほかの選手(チームメイト)はどんどん変えさせた(切り捨てた)」といった面も持ち合わせていたという。Jordanのチームを一時指揮していたDoug Collinsというヘッドコーチから直接聞いた話として、Simmonsは「こいつは今日はダメだとなると、Jordanが(その選手を)『ベンチに下げろ』と自分に目配せしてきた」などと書いている。

 並外れた身体能力とゲームに関する頭の良さ(“basketball IQ”という言い方がある)を兼ね備えたJordanでも、「孤軍奮闘」していた時期にはなかなか優勝できず、ようやくチャンピオンリングを手に入れることができたのは、ほかの選手も活躍できる機会が増えるような攻撃の仕組み(“Triangle Offense”という)が導入され、そして自分と「阿吽の呼吸」で意思疎通できるScottie Pippenという選手が実力をつけてからのことだった。これはファンの間でよく知られた話でもある。

 この「先導型」に対して、「後押し型」というのは、よく「司令塔」などとも呼ばれる役割を担った選手のプレイスタイルで、具体的には自分でチャンスを作り(「お膳立て」して)、フィニッシュは他の選手に決めさせる、などというのが特徴。北米プロバスケットボールリーグ(NBA)でパスの上手な選手の評価が高かったりするのは、そうした部分の表れでもある。

 先日、チームの移籍=地元チームへの復帰を発表して、それが米国で大騒動になっていたLeBron Jamesは、「ほかの選手の力を引き出すのも上手」な選手で、それを示すデータ(一緒にプレイしたほかの選手の成績が格段に向上)なども下記の記事には見つかる。

LeBron Is Going to Make His Cavs Teammates Whoa Better--FiveThirtyEight

 Jamesのこの移籍については、孤軍奮闘に疲れた、あるいはチームを前から引っ張るやり方には限界があること――それまで所属していたマイアミのチームは決勝シリーズまで進んだが結局完敗――を痛感し、優秀もしくは有望な若手のいる地元チームで彼らを意識的に「後押しする」ことにした、その方が時間は多少余計にかかっても優勝を狙いやすいなどと考えたのではないか、という推測もある…。

 脱線が長くなった。Appleのリーダーシップに話を戻す。

 2012年秋にあったScott Forstallの更迭にも、リーダーシップのスタイルに対するTim Cookの捉え方が関係していたのではないか。今から思うと、そういう感じがする。

 CookがForstallを「自分の立場を脅かす存在」と捉えていたかどうかは分からない。ただ、Forstallの長年の想いが「Jobs(のよう)になりたい」(それこそ“I'm here to replace him”だろう)だったとして、そうした人間が「次のリーダー」となれば、Jobsのスタイルの限界もそのまま引き継がれてしまう可能性が高い。

 「Apple=Steve Jobs」のままでよしとするなら、それでも構わない。けれども「Apple>Steve Jobs」を目指していく上では、それでは都合が悪い。都合が悪いどころか、マイナスに作用する場合もあり得よう。そういう危険の匂いをCookは本能的に感じとっていたのではないか。

 Forstallの中に「チーム(全体)優先でなければ届かないゴールがある」という認識が希薄だったかどうかという点については、無論確かめようもないけれども、人間の振る舞いの中には「頭でわかっていても…」というのが多分にあるから、そんな認識の有無を詮索してもあまり意味はないかもしれない。

 どんなに高い能力のあるプレーヤーでも、チーム優先(“unselfish”)の動きができなければいらない……。そういう考えのCookヘッドコーチの下で、Appleがどんな組織に変わろうとしているのか、あるいは変わりつつあるのか、といった点については次回の続きで。

 冒頭で示したビデオの中には、最後の部分に「あなたには自分で思っている以上の力がある(“You Are More Powerful Than You Think.”)」という一文がある。

 CMのメッセージだから、主語の「You」が一般のテレビ視聴者やウェブユーザーであるのは間違いないけれど、この「力(Strength)」というタイトルが付されたCMの中に実は「われわれはあなた方が思っている以上に強力だぞ(“We Are More Powerful Than You Think.”)」というAppleのメッセージ――主にウォール街やメディアの連中に向けたメッセージが隠されているような気がしてならない。


Apple - iPhone 5s - TV Ad - Strength

(本文敬称略)

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