情報セキュリティの総合カンファレンス「RSA Conference Asia Pacific & Japan 2014」が7月22~23日、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ・カンファレンスセンターで開催された。2月に米国で開催された「RSA Conference 2014」をもとにアジア太平洋地域の企業などが関心を持つテーマを盛り込んだ内容となっている。
期間中は、11のキーノートセッションや54のトラックセッションをはじめ、RSAやCisco Systems、Juniper Networks、Verizonなど約40社が出展し、製品を紹介した。日本からは100人以上が参加したという。
テーマは「Share. Learn. Secure.」
安全なデジタルワールドのための4つの活動規則
今回のカンファレンスのテーマは「Share. Learn. Secure.」だ。国境を越えて繰り広げられるサイバー攻撃に関する情報を世界規模で共有し、その対策を学ぶことで強固なセキュリティ環境の構築を目指す。
初日は、EMCのエグゼクティブバイスプレジデントであり、RSA部門のチェアマンも務めるArt Coviello氏が「United We Stand, Divided We Fall(団結すれば栄え、分裂すれば倒れる)」をテーマに基調講演に登壇した。
EMC エグゼクティブバイスプレジデント兼RSA部門 チェアマン Art Coviello氏
Coviello氏は、「インターネットの登場で情報がデジタル化したことで、世界中の人々が縦横無尽に接続できようになった。また、近年のクラウドコンピューティングやモバイル技術により、その接続性は加速している。経済分野でも、かつてないほど複雑に相互依存している」と指摘、「デジタルワールドでは、国境や地域、国民性などの区別はない。しかし、われわれは既存の“境界線”にとらわれ、デジタルワールドでのルールを曖昧にしている」と述べた。
世界規模で相互依存しているデジタルワールドでは、新しい「活動規則」の策定が急務であるという。現状ではその規則が確立されておらず、結果的にサイバー犯罪の増加や特定の相手を狙ったサイバー攻撃を引き起こしている。「活動規則を早急に策定しなければ、世界は共倒れになる」というのがCoviello氏の見解だ。
実際、サイバー領域で米国政府は中国当局と対立している。デジタル情報の取り扱いについては、米国と欧州連合(EU)諸国の間で認識の違いがある。Coviello氏は「デジタルワールドの安全性を確立するためには、国家間を超えた協力と、政府機関や利用者の間でガバナンスを効かせることが不可欠だ」と主張した。
具体的には(1)サイバー戦争放棄(ネットをサイバー戦争目的で利用しない)、(2)サイバー犯罪捜査への協力、(3)ネット上の経済活動の自由と知的財産権を保障、(4)個人プライバシーの尊重――という4つの規則を遵守すべきと主張した。
可視化、分析、プロアクティブな行動というアプローチ
Coviello氏は、企業がサイバー領域の脅威から自社を守るためには、従来の個別予防策では不十分だと力説。「監視(モニタリング)」と「レスポンス」に軸足を移すべきだとし、その具体的な施策として「可視化」「分析」「プロアクティブな行動」がカギになるとの見解を示した。
展示会場には約40社が出展。日本と同様にコンパニオンによる自社ブースへの誘導もチラホラ見受けられた
可視化では、セキュリティリスクを棚卸しし、どこにどのようなリスクが潜んでいるかを可視化する。その上で、情報資産の価値を判断し、適切に対応することが必要であると指摘した。今後はアプリケーションのログデータレベルではなく、パケットレベルまでを可視化の対象とし、外部からアクセスされる可能性があるのかを詳らかにする必要があるという。
分析では、米小売業のデータ流出事件を例に「可視化で得られたデータをもとに、通常とは異なるデータが発見されたときにはその原因を分析し、原因を追及することが重要である」と語った。
プロアクティブな行動については、「サンドボックスやウイルス対策の導入、ゲートウェイの設置といった防御対策では現在の攻撃は守れない」とし、今後はコンテキスト(文脈による関連性)を理解し、包括的かつ予測的に防御する技術が必要であるとの認識を示した。
同氏は、ビッグデータの活用はセキュリティレベルを向上させる「試金石」になっていると指摘。データを可視化し、分析し、その結果を踏まえてプロアクティブな行動を起こすという「インテリジェンス型セキュリティ戦略」を講じることができると指摘した。
会場となったシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ。ビル(ホテル)の最上階には全長150メートルのプールが乗っかっている。今や「マーライオンより有名な観光スポット」(シンガポール在住)という