最大の勝者と敗者は誰か--アップルとIBMの提携で分かれる明暗 - (page 2)

James Kendrick (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2014-07-28 07:30

Microsoft

 Microsoftはエンタープライズ分野にしっかりと浸透しており、それが近いうちに変わることはない。しかし、同社はモバイル分野では強力ではなく、これこそが、同社のライバル企業同士の新たな提携によって影響を受ける可能性がある分野なのだ。

 「Surface」タブレットの大がかりな宣伝は、ある程度は消費者に向けたものであるが、エンタープライズ分野への普及も目指している。エンタープライズ分野はMicrosoftの最大の強みであるため、これは理にかなっている。

 IBMが大量のiPadを職場環境に投入しようとしていることは、Microsoftと、同社のSurfaceの取り組みに大きな打撃を与えるだろう。企業で使われるiPadが1台増えるたびに、代わりにそこで使われていたかもしれないSurfaceタブレットが1台減ることになる。これは、Microsoftで始まったばかりのビジネスに大きな影響を与える可能性がある。

ペン入力

 入力にペンを使うタブレットは、エンタープライズ分野では普及していない。一部の垂直市場では、さまざまな理由からペン入力を採用しているものの、大半の企業ではペン入力を避けてきた。

 Microsoftは「Surface Pro 3」でその状況を変えようとしており、ペン入力の素晴らしさを示す広告を展開している。筆者は図らずもその素晴らしさには同意するが、企業で働く人々の圧倒的多数はそう考えていない。ある企業が過去にペン付属のタブレットを導入した時でも、職場ではそのペンが使われないことに気づいて、使うのをやめたという声を多く聞いた。

 それが、Microsoftにとって、そしてSurfaceのエンタープライズ分野への普及にとって、以前から障壁になっている点だ。たとえペン入力の方が良くても、IBMがタッチ入力に最適化されているiPad向けアプリの開発を始めたとなれば、状況は好転しないだろう。

 職場ではペン入力は好まれていない上に、特定の業務用アプリが、ペンなしでの作業に完全に最適化されてしまえば、ペンは過去のものになる。そうなるとMicrosoftは、Surfaceだけでなく、「Windows 8.1」の面でも大打撃を受けることになるだろう。

最大の勝者

 IBMとの提携での最大の勝者はAppleだという声もある。その提携が大成功であることは間違いない。この取引は、Appleにとって大きなメリットとなる可能性が高いかもしれないが、筆者が考える最大の勝者は企業だ。

 IBMのソフトウェアを搭載したiPadを導入するという選択肢を持つことは、企業でのモバイル端末の採用を容易にするだろう。モバイルは今では最大のテクノロジ分野であり、モバイル化を適切に行うための選択肢を持つことは重要だ。

 iPadを大規模導入できることは、業務向け「AppleCare」が提供されることを考慮すると、従来のPC導入よりもコスト削減になるだろう。Appleのハードウェアサポートは、非常に優れたサービスだという評判がある。それをエンタープライズ業界に持ち込めば、大改革をもたらすだろう。

 新しい提携によって企業が最大の勝者となる一方で、消費者も恩恵を受ける可能性がある。BYOD(職場での個人用デバイスの使用)プログラムは改善されるだろうし、iPadとIBMのつながりを考えれば、数の上でも増加するかもしれない。この提携から生まれる製品がエンタープライズ専用になるのか、あるいはBYOD向けに個人に対しても購入オプションが提供される可能性があるのかについては、まだ明らかになっていない。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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