端末の機能をどうすべきか
次のポイントとなるのが「下り方向の用途への配慮」だ。M2Mでは、人がブラウザからアクセスするのとは異なり、サーバや中央のコントローラから末端にある端末をリアルタイムにコントロールしたいというニーズは必ず出てくることになる。端末からデータを収集するモニタリング用途では、端末からのビーコンは「単純にHTTPリクエストで飛ばせばいい」
だが、端末をコントロールするとなると、さまざまな工夫が必要になってくる。たとえば、「HTTPレスポンスにコントロールパラメータを乗せられるが、それはビーコン周期になる。サーバプッシュが可能なアプリケーションプロトコルを使えばいいが、まだ一般的ではない。なかなか簡単に使えるプロトコルがないのが現状」と解説した。
「やっかいな問題として“NAT越え”がある。これはどうしても導入しなければならない問題で、安定性を保つのも大変。将来、“HTTP 2.0”になればクライアントからサーバプッシュのコントロールが可能になる。だが、普及に時間かかる。さらに期待できるものとして“IPv6”もある。IPv6が普及すれば、それぞれの端末が独立したグローバルIPアドレスを持つので自由なルーティングできるようになる。だが、これも相当先の話とみている」
だが、Akamaiのユーザー企業には安定的にNAT越えを展開しているという。そのユーザー企業は、ビデオチャットで実際に使っている。NAT越えでもコネクションをキープするので、落ちることなく安定した接続ができるという。通信先が地球の裏側だったとすると、こういう仕組みは非常に効果があると説明。Akamaiでは、こういった技術を駆使してNATを超えてコントロールすることをビデオチャットに限らず複数の事例で挑戦している。
下り方向の用途では、もうひとつ「端末のバージョンアップ」がある。端末のソフトウェアのバージョンアップは必ず伴う課題だ。端末ごとにゆっくり順番に展開していけば問題はないが、実際には新サービスの展開日までにすべての端末をバージョンアップするとなると、急ぐ必要が出てくる。
この例はコンテンツ配信網(CDN)と言われるものだが、「アカマイが最も得意とするところ」だ。CDNの基本形だが、サーバに負荷を与えずに同時に多数の端末でアップデートを実行できる。
ここで考えておきたいポイントとなるのが、M2M/IoTの端末の機能だ。三菱UFJニコスの事例から言うと、サービス開始段階で最小限の機能だけで端末を設置するべきか、サービスを始める前にロードマップを立てて段階的に機能を追加していけばいいのだろうか?
これに対して新村氏は「考え方はいろいろある」と回答する。「世の中の技術が発展する方向は誰にも読めないところがある。端末はなるべく柔軟にしておくべき。端末のコストを下げるために、なるべく機能を削らなければいけない。ソフトウェアだけで遠隔からコントロールできるようにしておく必要がある」
最近では、家庭の電化製品を専用のプロトコルから外出先から制御するということが注目されている。現状から見据えると、今後は仕様やスペック自体を何回もバージョンアップすることも予想される。そうしたことから新村氏は「端末の機能を決めて出荷して終わりではなく、バージョンアップ可能な仕様にしておいた方がいい」と提言した。
データ収集のタイムスパンを考える
最後のポイントとなるのが「データ鮮度に応じた収集、分析メカニズム構築」だ。つまりは、ビジネスで必要となるデータをどのくらいの頻度で集めて、データをどのように活用していくのか、ということを考えてビジネスに応用しなければならない。