ベトナムでビジネスをする

ベトナムの高等教育事情--優秀な人材をどう確保するか - (page 2)

古川浩規(インフォクラスター)

2014-07-25 07:30

理工系人材のさらなる養成が喫緊の課題

 ベトナムは、国家戦略として2020年までに工業国化を達成するという目標を掲げています。そのため、この戦略にのっとった量と質の両面を改善する人材養成が大学においてもなされているところですが、まだまだ改革の途上です。そして日本の高専(高等専門学校)のような、専門的、実践的な技術教育を特徴とする高等教育機関も十分ではありません。

 先ほど紹介した通り、ベトナムの大学は旧ソ連を1つの範としています。そのため、工学部の同じ学科であっても大学が異なると4年制を採用する大学もあれば5年制を採用する大学もあります。

 現在では厳密な違いとはなっていませんが、4年制を採用する大学では主に学術研究に資する人材養成に、5年制を採用する大学では主に産業に資する人材養成に取り組んでいます。

 この1年の違いは、インターンシップでの学生の実習が行われているかどうかによるものですが、いずれにしても、大学での理工系人材養成だけではベトナム国内で必要とされている人材需要には十分に対応できていません。

 また、質の問題については、これまでの問題点として、理論や座学に重点が置かれ実践力が十分ではない、との指摘が外資系企業を中心になされてきました。特に、大学であっても中央政府の決定する画一的なカリキュラムの実施を求められることから、大学教育の独自性が出しにくいとの声も聞かれます。

 そのため、教育内容については、日本をはじめとする各国の支援を受け、諸外国のカリキュラムの導入を図る実験校や技術学校を設けたり、日本の高専との連携を図り、留学させることで実学を充実させようとしたりする大学も出てきています。

 しかし、ベトナムで実際に従事できる日本人教員の数や対応できる日本人技術者の数も限られていることから、根本的な解決には至っていないのが現状です。また、ホーチミン思想の授業や軍事訓練といった、中央政府が決定しているベトナム独自のカリキュラムも実施しなければならないため、留学先の外国の大学との完全な単位の互換も認められないという問題も依然として残っています。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

関連記事

関連キーワード
アジアのIT

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  2. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  3. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  4. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  5. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]