理工系人材のさらなる養成が喫緊の課題
ベトナムは、国家戦略として2020年までに工業国化を達成するという目標を掲げています。そのため、この戦略にのっとった量と質の両面を改善する人材養成が大学においてもなされているところですが、まだまだ改革の途上です。そして日本の高専(高等専門学校)のような、専門的、実践的な技術教育を特徴とする高等教育機関も十分ではありません。
先ほど紹介した通り、ベトナムの大学は旧ソ連を1つの範としています。そのため、工学部の同じ学科であっても大学が異なると4年制を採用する大学もあれば5年制を採用する大学もあります。
現在では厳密な違いとはなっていませんが、4年制を採用する大学では主に学術研究に資する人材養成に、5年制を採用する大学では主に産業に資する人材養成に取り組んでいます。
この1年の違いは、インターンシップでの学生の実習が行われているかどうかによるものですが、いずれにしても、大学での理工系人材養成だけではベトナム国内で必要とされている人材需要には十分に対応できていません。
また、質の問題については、これまでの問題点として、理論や座学に重点が置かれ実践力が十分ではない、との指摘が外資系企業を中心になされてきました。特に、大学であっても中央政府の決定する画一的なカリキュラムの実施を求められることから、大学教育の独自性が出しにくいとの声も聞かれます。
そのため、教育内容については、日本をはじめとする各国の支援を受け、諸外国のカリキュラムの導入を図る実験校や技術学校を設けたり、日本の高専との連携を図り、留学させることで実学を充実させようとしたりする大学も出てきています。
しかし、ベトナムで実際に従事できる日本人教員の数や対応できる日本人技術者の数も限られていることから、根本的な解決には至っていないのが現状です。また、ホーチミン思想の授業や軍事訓練といった、中央政府が決定しているベトナム独自のカリキュラムも実施しなければならないため、留学先の外国の大学との完全な単位の互換も認められないという問題も依然として残っています。