寺嶋氏は「OSSを使って開発した自社ツールなどとの相性も良かった。思いついたことをすぐに試せるのが魅力だ。優秀なエンジニアをハード更新という生産性ゼロのプロジェクトから外し、アプリケーション開発、保守、運用に特化できる効果も大きい」と話した。
オープン化、クラウド化でロックインから逃れるローソン
ゲストとして最後に登壇したのは、ローソンの専務執行役員 加茂正治氏。同社では、2016~2018年に次世代システムへと刷新する計画で、加茂氏は、その際に配送システムや顧客情報管理システム(CRM)を含めたすべてのシステムをAWSに移行する予定だと明かした。
配送システムは国内約1万2000店舗を展開し、約3000万個の商品を店舗に届けるローソンの事業の根幹をなすものだ。チルド、ドライ、フローズンの3温度帯のセンターを約100拠点持ち、店舗への定時定着率99.6%という正確さを誇る。CRMとサプライチェーン管理システム(SCM)を融合する施策がある。これは、電子マネーのPontaカードを軸に購買履歴を分析し、その結果をサプライチェーンに適用して、売り上げと利益の向上、総荒利益率の向上を図ろうというものだ。
ローソン 専務執行役員 加茂正治氏
「商品開発のデータとしては、当初Hadoopを使った分析で収まっていた。だが、リアルタイムの発注や製造に生かそうとすると、コンピューティングパワーが必要になる。2015年からの会社の経営テーマとして、ヘビーユーザーを増やすために、店舗運営やSCM運営を最適化するという目標を掲げている。そんな中でITをどう生かすかが課題になってきた」(加茂氏)
ITの課題としては、40年にわたるこれまでのシステム更新の歴史から、受発注システムを含めてさまざまな系統でベンダーロックインやハードウェアロックインが起こっていたことが大きいという。
1万店舗を超える店舗での受発注業務を処理するためには、店舗ごとにストアコンピュータや販売時点情報管理(POS)システムなど機能を分けて持つ必要がある。すると、センターのシステムだけでなく、店舗の設備にもロックインの影響が及んでいくことになる。「新しい技術が出てきても採用できない」状態に陥っていた。
「そこで、2016~2018年には、すべてのシステムをクラウド化、オープン化し、ロックインから逃れる。まず、店内システムをセンターに集約する。店舗のオペレーションと物流のオペレーションの両方を省力化する。そしてオープンな環境で作られたシステムの運用を内製化する」(同氏)
具体的には、2014年から2015年にかけて、情報系と開発系のシステムをクラウド化する。これは販売データをリアルタイムに吸い上げて、天候や需要の類似点、店舗の特性などを見て、リアルタイムに店舗に情報を提供し、それをもとに受発注できるシステムになるという。その後、本部系とEC系、店舗系と基幹系に広げていくとした。