職場にスマートフォンやタブレットといったスマートデバイスが導入されると2兆円の経済効果をもたらす――。デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)が7月30日に発表した調査で試算した。
同社は職場にスマートデバイスなどの導入の課題、導入が進むことで生みだされる効果を調べた。日本のフルタイム従業員を中心に、パートタイム従業員や専業主婦、学生なども含む500人超を対象にDTCが4月に実施したアンケートで調査した。
自宅と職場のIT環境を比較すると、自宅のIT環境の方が進んでいると感じていることが分かった。従業員は、自宅のIT環境の使いやすさ(51%)、新しさ(45%)、ネット接続速度(43%)という3つの点で、職場のIT環境より自宅の方が優れていると感じている。
企業は労働環境の整備への対応を迫られているにもかかわらず、新しいテクノロジの導入に遅れを取っており、職場のIT環境は私生活で進んだデジタルテクノロジに慣れている従業員にとって不満の原因となっていると説明している
職場でのデジタルテクノロジの活用で期待される効果として特に、従業員間のコラボレーションが挙げられる。今回の調査で、従業員同士のコラボレーションを妨げる最大の障壁として、職場の体制やカルチャーといった組織上の問題があった。
一方、IT環境や通信システムの不備が妨げの要因と答えた割合は、組織上の問題に対して半分程度に留まる。コラボレーションを促そうとしている企業にとって、テクノロジの整備も重要であるが、デジタルテクノロジを活用するための職場の体制、カルチャーを育むことも求められると提言している。
従業員の雇用などについてデジタルテクノロジの導入でどれだけの経済効果が生まれるかについて以下の2つのセグメントで調査し、あわせて約2兆円が見込めるという。
調査の結果、現在働いていないという回答のうち、12%が「職場からのモバイルテクノロジの支給があれば仕事ができる」と答えている。
総務省統計局の2013年度の労働力調査によると、現在は働いていないが就業意欲のある就業希望者数は428万人。環境が整備されることで約51万3000人の「潜在雇用者」を生み出すことができ、その潜在雇用者が仮に一般労働者の平均賃金額296万円の経済価値を創出すると仮定すると、約1兆5202億円の経済効果を生むと試算している。
定年を迎えるが継続して働く意思がある人材に対しても同様に調査した。総務省の国勢調査の推計値によると2013年の定年退職者数の見込みは144万人程度と試算、厚生労働省の高年齢者雇用実態調査によると定年退職者のうち55%にあたる79万2000人が少なくとも1年以上は現雇用者と雇用契約を延長したいと考えている。
DTCの調査では、現在働いているという回答のうち、20%の人材がモバイルテクノロジの企業サポートがあれば仕事を継続できると回答している。結果として、環境が整備されることで5万9000人の潜在雇用者を生み出すことができ、一般労働者の平均賃金額を掛け合わせると約4711億円と試算している。