日本酒「獺祭」の安定生産に農業向けSaaSを活用--栽培データを地域で共有へ

大河原克行 2014年08月05日 06時45分

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 日本酒「獺祭(だっさい)」の製造・販売元である旭酒造(山口県岩国市)は、富士通の農業向けSaaS「Akisai(秋彩)」を導入。獺祭の原料となる酒造好適米「山田錦」の安定的な調達に向けて新たな取り組みを開始する。

 獺祭は、人気ある日本酒として注目を集めているが、需要にあわせて供給されていないのが現状。山田錦の生産者が限られていることや、倒伏しやすい、収穫量が安定しないなどの栽培の難しさの問題も獺祭の販売量増加に対応できない理由のひとつとなっている。

設置されたセンシングネットワーク
設置されたセンシングネットワーク(富士通提供)
獺祭(だっさい)
旭酒造の日本酒「獺祭(だっさい)」

 これまで両社では、山田錦の栽培での作業実績と生産コストの可視化を目的に、4月から山口県内の2件の山田錦生産農家にAkisaiを導入している。農業生産管理SaaSとマルチセンシングネットワークで栽培作業実績情報を収集、蓄積してきた。

 日々の作業実績や使用した農薬や肥料、資材のほかに草丈、茎数などの稲の生育状況、収穫時の収穫量、品質などをPCやタブレット、スマートフォンといったデバイスを使って記録。センサを設置して、気温や湿度、土壌の温度と水分、電気伝導度を1時間ごとに自動収集する。定点カメラで正午の生育状況を撮影したという。

 今後、栽培成績の良かった作業実績をもとに、栽培の手引きとなる“栽培暦”を作成する。把握が難しかった生産過程前提にかかるコストを作業実績から算出する。農薬や肥料の使用実績情報から生産履歴情報を作成し、安全性の担保につなげるという。

 旭酒造では2015年以降、この取り組みに参加する生産者の増加に乗り出す考えであり、蓄積された栽培情報をもとに、農業関係者の協力を得て、山田錦の安定栽培技術の確率を目指す。加えて、新たに山田錦の生産を開始する生産者に栽培ノウハウを提供し、生産量増加に向けた取り組みを強化していくという。

桜井博志氏
旭酒造 代表取締役社長 桜井博志氏

データ活用で冬場の仕事を1年中に

 旭酒造代表取締役社長の桜井博志氏は、「獺祭は、国内だけでなく海外でも販売が増加しており、毎年2桁の成長を遂げており、2009年度には3169石だったものが、2013年度には1万1307石となっている」という。1万石は1.8リットル瓶換算で100万本になる。

 「だが、2014年度は2013年度並みの1万1300石にとどまる。これはわれわれが期待しただけの米が購入できないのが理由。現在、本社に地上12階、地下1階、延べ床面積3200坪の新たな工場を建設しており、これが完成すると、現在の3倍になる5万石の生産能力を持つことになる。この時には20万俵の山田錦が必要になる」(桜井氏)

2015年稼働予定の新本蔵
2015年稼働予定の新本蔵。約5万石を生産できるという

 桜井氏は「山田錦は、1962年には年間50万俵の生産があったが、その後減少傾向にある。酒蔵が山田錦を購入してこなかったという背景もあるが、山田錦は背丈が高い米であるため、作りにくいのではないかという農家の不安感もある。足らない米でも、増えていないというのが山田錦の現状である。安倍政権後、酒米は減反政策から外れており、あとは技術の問題」と指摘した。

山崎富弘氏
富士通 イノベーションビジネス本部 Akisaiビジネス部 シニアディレクター 山崎富弘氏

 現在、旭酒造では、8万俵の山田錦が必要だというが、調達量は4万俵にとどまっているという。「4万1000俵の調達量のうち、約70%が主産地である兵庫県から調達している。兵庫県など他県の農家にもノウハウの提供を広げていきたい」(桜井氏)と期待を語った。

 富士通 イノベーションビジネス本部 Akisaiビジネス部 シニアディレクターの山崎富弘氏は、「旭酒造は、データを活用した科学的分析で冬場の仕事であった杜氏(とうじ)作業を1年中行えるようにしたという実績がある。富士通は作業や環境、育成データの蓄積で農業ノウハウを可視化し、農家の経営力向上支援に取り組んでおり、データを活用したモノづくりというコンセプトで考えが一致した」と説明した。

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