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JKとメガネにITをかけて鯖江と解く--「電脳コイル」目指すjig.jp福野社長 - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2014-08-21 07:00

オープンデータは今までにないおもちゃ

--オープンデータ領域への取り組みについて。

 鯖江市とオープンデータに取り組んでいますが、正直なところ、自治体がよくこんなわからないものに手を挙げてくれたと思います。「何かをやらなきゃいけない」と思う人が自治体にいるということですね。それにエンジニアが応えられていない状態で、もったいないと思っています。

 鯖江ではいろいろなオープンデータが提供されており、アプリを作るのが好きな私にとっては、今までにないおもちゃが出てきたようなものです。いろいろ作っていますが、実際に取り組む人が少ないのは残念です。

 そこで、2つの手を打っています。ひとつは「鯖江市といえばオープンデータ」というような活動を推進することです。例えば島根県松江市では、プログラミング言語の「Ruby」をIT産業振興のための地域資源として着目し「Rubyの街」を掲げていますが、市では(システム構築の際)Rubyで発注し、地元の会社がそれを受注するシステムを採用しています。

 オープンデータの取り組みが開発者を惹きつけるのではないかと思い、先日データベース関連のシンポジウムでも呼びかけました。反響はありますし、オープンデータに関する市への視察もあります。ただ開発者には、まだまだ浸透していない感じですね。

 オープンデータを利用したアプリに関しても、まだ世界に売るフェーズにはいっていません。トライはしていますが、住んでいる人のニーズをもっと具体的に聞いて、それを解決していく流れが必要です。

 もう1つは鯖江で作ったもの(アプリなど)を(APIの公開などにより)全国で使える状態を作ることです。(Rubyを推進した)松江市でも一定の需要は内需で満たせられますが、そこで生まれたサービスを外にどう売るかがテーマになってきました。

 鯖江市では市の情報をオープンデータ化しているので、それを使ったシステムが登場し、そのシステムがデータを入れ替えれば、他の町でも使えるような形になればいいですよね。さらに、それが国内に限らず世界標準の仕様になって海外に売っていく。そこに共感してくれる人はきっといると思っています。

 鯖江で作ったものが全然違う場所で普通に使えるようにするなど、離れた地域でも動いているところを見せられれば説得力が上がります。われわれの自治体もデータをオープンすれば使えるのかもしれないと、広まるスピードが加速的に上がるのではないかと思います。

 自治体の職場で上司の賛同を得られない場合には、外堀りから埋めていくことを勧めています。オープンデータは自治体がやらなくても、避難所一覧などのデータは探せばあります。それを自分で勝手に移植して動かしてみせる。「こんなことができる」ということを形として見せるのがいいと思います。

--日本の企業でオープンデータの活用が進んでいないという声がある。

 企業には金額で伝えるよりも、ウェブ自体がセマンティックウェブへ大きく変わろうとしていることを伝えた方がいいでしょう。オープンデータは行政がやるものと思ったら大間違いです。これからの新しいウェブを作っていく基礎技術がオープンデータで、それが行政から始まったに過ぎません。

 AmazonがAPIを公開して全国の小売店舗を駆逐しようとしているように、オープンにするところ、しないところをうまくコントロールすることによって、ウェブ時代を制するかどうかという戦いがすでに始まっているという状況なのです。

 最初はできるところから始める。ラーメン屋ならチェーン店の店舗一覧をオープンデータにする。そして、自治体のオープンデータがあれば、それとマッシュアップして便利なアプリができます。掲載されるところもオープンデータであれば、オリジナルのデータを更新すればすべて適用されます。

 HTMLというドキュメントベースで共有していくウェブの世界から脱却が始まっています。これからのウェブの動きについていこうとするスピードが速いほどいろいろな経験が得られます。できるところから入って面白さを知ってもらえたら素敵ですよね。

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