このままではゲームマシンネイティブ
「今はこういう課題がある」ということをまず知ってもらって、その上で「解決につながるかもしれない道具を揃えてみたから、これでやってみてほしい」とお願いするくらいでないと、子供は成長しないと思います。
昔ながらの教科書は、要は大学に入るためのものです。大学に行って優秀な人間が官僚になってハッピーだったという社会の仕組みを、そのまま使っていますが、うまくいっているとは言い難いのが現代だと思います。これまでを振り返れていないし、変えようとしているように感じられません。まして、変えられない仕組みにしていると思います。
世界銀行も、本当は世界中のいろいろな課題をデータ化したいと言っており、実現が待たれます。ある地域で課題に対する解決法がどこかで生まれたら、アプリであればスケールするし、モノであれば3Dプリンタを送ればいい。

今は社会問題を解決するために色々とスケールする方法があるのに、偉い人がそれをわかっていない。世の中をデジタルネイティブじゃない人が握っていること自体が大問題なのです。ちゃんときっかけを与えないと、子供はデジタルネイティブではなく、ゲームマシンネイティブになってしまいます。結果を出さないとバズワードで終わってしまう。
日本政府の「世界最先端IT国家創造宣言」を受けて、2014年の改訂版でプログラミング教育も新たに強化されました。でも、教育を変えるには10年かかるといいます。これは根深い問題で、例えば小学校の先生は基本的に文系なので、算数も理科も嫌い、コンピュータは大嫌いなんです。
そんな人にコンピュータの話をして下さいと言っても、コンピュータ嫌いが量産されるだけです。だから別のところで(コンピュータ領域の)小学生のヒーローを作りたいのです。変なヤツが出てきてほしい。
--今後の取り組みと展望は。
今後はまず、地図データを使いたいと思っています。高さの情報と組み合わせて(マンガの)「進撃の巨人」が街に存在したら、どの程度大きいかをAR(拡張現実)で見る。そういうリアルとバーチャルをうまく組み合わせた変な体験をやってみたいですね。まだデバイス側もついてきていない状況ですから、両輪を合わせて取り組んでいきたいです。
2012年に鯖江市でイベント「電脳メガネサミット」を開催して、いろいろなアイデアが出てきました。しかし都市のデータ化がないと、デバイスがいくらあってもキラーアプリは作れません。そこで情報都市宣言をして、オープンデータをますます進めようとしています。意識が高まってくれば、鯖江のメガネ関連の500社が「面白そうだからやってみるか」と盛り上がっていくと思います。
展望ですが、「子供起業家」が山ほど出てくる社会になればいいですね。とはいえ今は、起業家といっても会社を作るかどうかは関係ない世界になっています。サービスを作って、それを使う人がたくさんいる。そういう状況を作れる子供が5年後は山ほどいるようになる。それが気づかないうちにグローバルに展開しているようになると面白い。
私は子供に教えることは性に合わないので、きっかけを提供していきたいです。自分で学べる子供に育ってもらうことが一番。学校は学び方を学ぶ場所として、たくさんのきっかけがあればいいと思います。
そのきっかけがオープンデータと小さなコンピュータです。ネットにつなげば簡単にモノのインターネット(IoT)が体験できる。3Dプリンタも子供が持っていれば何でも作り放題です。作ったモデルデータをフリーで公開すれば、世界中で印刷して使ってもらえます。子供のオープンソースコミュニティができたら、カオスになっていいと思います。そんな子供たちに、大人だからこそ渡せる「変な道具」や環境を提供していきたいと考えています。
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