案件にかかる時間を半減--佐賀県がモバイルワーク環境で成功できた理由

山田竜司 (編集部) 2014年08月19日 13時59分

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 佐賀県では2003年から外部から最高情報統括監(CIO)を登用してIT化を推進している。CIOの森本登志男氏は「業務の効率化、サービス向上、最適なIT投資」を自身の役割の1つとして、場所や時間の制約を受けることなく仕事ができるテレワークやモバイルワークを推進している。

 県知事の指示もあり、モバイルワークと並行してすべての職員を対象にした在宅勤務やサテライト勤務も推進した。出会いや結婚応援、出産、子育て応援のための取り組みである「418(しあわせいっぱい)プロジェクト」の一環として、仕事を続けながら子育てや介護ができる働き方を試すほか、新型インフルエンザによるパンデミックや想定外の自然災害へ対応するねらいがある。

 佐賀県はモバイルワークの実現に向け、2013年7月に仮想デスクトップ基盤として「XenDesktop」を、リモートアクセス時のセキュリティ基盤としてアプライアンス「Citrix NetScaler」を採用した。約2カ月で仮想デスクトップ環境を構築し、2013年8月から試験的に仮想デスクトップ環境と100台のタブレット端末を展開したモバイルワークを試行している。XenDesktopは実績やセキュリティ、サポートなどを評価し、競争入札を経て採用が決まった。

 まずは100台のタブレット端末を農業や商工、広報などの現場でどのように活用するかを公募し、約200台分の申し込みの中から内容を精査して、100台のタブレット端末の配布先を決定した。全ての所属に一律に導入するのではなく、意識の高い所属に主体的に取り組ませ、それを横展開した方がよいと考えたためだ。

 モバイルワークの試行は開始から6カ月、農業経営に関する普及指導や情報提供を担う農業改良普及センターで大きな成果が上がったと説明する。指導員は、生産現場を訪問して対応しているものの、高度な専門性が必要な場合に対応が後手にまわっていたが、実証実験では、タブレット端末を使って専門の職員とつなぎ、害虫や病気などの問題にその場で応えることができたケースが見られたと説明している。

 他の部署でも問題をその場で解決できるため、庁舎に持ち帰って解決策を検討する頻度が49%削減されたという。広域に影響を及ぼす問題の場合には、即座に問題に対応し、対応策を写真や動画付きで一斉配信できるため、リスクを最小限にできるとした。さらに出張中のすきま時間を利用し、業務報告を作成することで時間の利用率は3倍向上、報告書を書く時間は半減し、直行直帰の回数も12ポイント向上しているという。

 どの業務シーンでモバイルワークが有効だったかについては、「企業誘致の担当部門がタブレット端末を利用して佐賀の魅力をプレゼンテーションできた点」「土日登庁の必要なく、自宅からでもホームページの更新が可能になった点」「不法投棄などの現場対応が必要な業務で地図情報サービスが利用可能な点」を挙げた。業務の種類を問わず、高いセキュリティ要件が求められる業務にでも、安全性を担保しつつ大幅な業務効率化を実現しているとした。

 タブレットと仮想デスクトップ環境を活用することで、現場で発生している問題の対応の持ち帰りが49%削減し、実質的な対応時間を大幅に削減しているとした。子育てや介護のために、働くことができない女性にも有効だと見る。

成功のポイント

 モバイルワーク実証実験から佐賀県が学んだテレワークの成功のポイントとは何か。森本氏は「情報インフラの構築」「制度」「風土」の3つを挙げた。まず仮想デスクトップ環境とタブレット端末の組み合わせのような情報インフラを構築する。次に在宅勤務やサテライト勤務を制度として確立した。最後に在宅勤務やサテライト勤務は特殊なことではなく、当たり前の働き方であるという風土を創りあげることが必要という。

 中でも重要なのが風土という。佐賀県ではまずは所属長以上に週1回、在宅勤務やサテライト勤務を課し、モバイルワークや在宅勤務が本格化したときにどのように組織を運営していくかを体験させた。

 現場でのタブレット端末の活用と職員のテレワークの実現が軌道に乗ったことにより、案件にかかる時間は半減したという。業務効率の向上も、住民サービスのスピードや質の向上に貢献しており、多様な働き方を実現するインフラが整備された点を評価した。

 今後は実証実験で効果的だったことや問題点を洗い出して改善を重ね、2014年10月までに約1000台のタブレット端末を新たに導入し、仮想デスクトップの利用範囲を全庁的に拡大する予定だ。実験で有効だった職員用ポータルやオフィススイート、写真共有ツール以外にもメールや地図情報、ファイル共有などのサービスを利用可能にする。今後はダムや山林など、ネットワークがつながらない場所でもタブレット端末で仕事ができる環境の構築を目指すという。


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