デジタルバリューシフト

デジタル化が企業価値を変える--バリューシフトの時代 - (page 4)

千葉友範(デロイト トーマツ コンサルティング) 林 大介(デロイト トーマツ コンサルティング)

2014-09-04 07:00

デジタルバリューシフトにおけるIT部門のあり方とは

 デジタルテクノロジが企業の価値を変えていくことはこれまで述べてきた通りであるが、そのけん引役は誰だろうか――それはIT部門に他ならないと断言したい。効果的な施策を実行するためにはデジタルテクノロジへの深い造詣が必要不可欠だからである。


図2:デジタルバリューシフトを実現するために取組むべき項目

 しかし、システムインテグレーターに大部分を委託するという商習慣に慣れてしまった日本企業のIT部門は、残念ながら今のままではデジタルバリューシフトの原動力にならないだろう。デジタルバリューシフトを実現するためには、図2のようなテーマについて、さまざまなアーキテクトを設計していかなければならない。そうしたスキルを求められることになる。


図3:従業員によるIT部門の評価

 図3はITRの調査結果だ。従業員が自社のワークスタイル変革に対して「推進している」か「阻害している」かを部門ごとに評価した図であるが、情報システム部門は推進も阻害も低ポイント、すなわち「毒にも薬にもならぬ」と表されている。厳しい言い方をすれば、自社の社員からほとんど何も期待されていないのがIT部門の現状であるとも言える。

 しかし、くり返し述べるがデジタルバリューシフトのけん引役はあくまでIT部門であるべきだ。企業はまずIT部門の役割や位置づけを変え、本来業務に集中させるためにアウトソーシングを活用し、人材獲得やリテンション、教育やキャリアプランニングまで幅広く改革する必要がある。

 今までのIT部門のイメージを捨て去る時が来ているのかもしれない。実際、ワークスタイル変革を推し進める企業では、IT部門と総務部門を統合する例も増えてきている。

 デジタルテクノロジを駆使してワークスタイル変革を進めるにあたり、PCはIT部門、電話や机は総務部門というセクショナリズムは、変革実行の邪魔にしかならないと判断したのでだろう。デジタルバリューシフトを起こすためには、そのけん引役になる部門の設計、すなわち組織戦略が重要になってくる。

 本連載では現在のIT部門が抱える課題を押さえ、先進事例を交えて業界への提言という形でまとめていきたい。

企業「再設計」の試金石

 ここまでデジタルバリューシフトの概論を述べてきたが、まとめると「デジタルテクノロジによる企業再設計の準備をせよ」ということだ。その試金石として適当であり、大きなチャンスと言えるのがワークスタイル変革だと考える。

 大げさに言えば、ワークスタイルすら変えられないような企業は、今後デジタルバリューシフトの恩恵にあずかることはないだろう。連載第2回はワークスタイル変革の現在地と関連するデジタルテクノロジについて、事例を交えて解説したい。

千葉 友範
デロイト トーマツ コンサルティング マネージャー
大学院在籍中にIT系ベンチャー設立に参画を経て現在に至る。業務改革プロジェクトを中心に実施し、近年では、デジタルデバイスを活用したワークスタイルチェンジや販売力強化など、戦略策定から実行支援までプロジェクトを多数実施。「会社で使う タブレット・スマートフォン2013」など執筆多数。
林 大介
デロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント
電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とした戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、M2M、IoTなどの技術トレンドを背景にしたワークスタイル変革に注力し、変革実行支援やソリューション販売支援などを手がける。

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