「情報通信白書」最新版を読む

「情報通信白書」最新版に見るICTの現在(前編)--世界で戦うには何が必要か - (page 4)

田島逸郎

2014-10-03 07:00

 また、東京五輪をマイルストーンとして世界に日本のICTを発信するという意図も見られる。各国で開催されてきた五輪は、その時々での最先端のICTを含めた技術がふんだんに使われてきた。前回の東京五輪では初めて衛星での生中継が行われ、ロンドン五輪では、ソーシャルメディアの活用が強く促進された。2020年の東京五輪では、社会課題を解決するインフラとしてのICTに焦点を当て、「ICTによる最高のおもてなし」を実現するとしている。


「「ICTによる最高のおもてなし」の実現に向けて」
出典:「平成26年版情報通信白書」(総務省)

世界で戦えるICTの条件

 「ICT産業のグローバル戦略に係る成功要因及び今後の方向性に関する調査研究」では、ICT産業を上位レイヤ(コンテンツ・アプリ、プラットフォーム)、ICTサービス(システム、クラウド、データセンター)、通信(コアIP網、アクセス)、通信機器(基地局、ルータ、スイッチ)、端末(携帯電話、PCやTVなど)の5つのレイヤに分けて国際的なポジショニングの分析をしている。全ては解説できないが、重要だと思われる点を抜粋した。

 まず、世界市場の傾向として、日本のICT産業の業種別成長率は他地域に対して低く、デバイスについてはマイナス成長である。また、FT Global 500におけるICT産業の株式時価総額では、日本が最も減少幅が高い。時価総額ベースでは、日本は通信、電気・電子部品の割合が高い。また、事業規模別のICT企業比率では、日本は大企業が多い傾向にある。

 個別のレイヤでは、通信レイヤでアジア太平洋やアフリカ、南米など途上国での伸びが大きく、固定から移動体へと軸足が移っている。また、音声からデータへのシフトも進んでいる。通信機器レイヤでは、従来型設備からIPへ、2G/3GからLTE/4Gへの以降が進んでいる。端末レイヤでは携帯電話生産でスマートフォンが急激に伸びており、PCもタブレットの割合が急激に増加している。

 日本のポジションとしては、ICTサービスレイヤでは日本は急激に国内でのシェアを落としており、一方でアジア太平洋では大きく伸びている。通信レイヤでは日本企業は海外利益率が低い傾向にあるが、2006~2007年頃と比較して2011~2013年は売上高年成長率では突出した企業が減り、競争が激しくなっている中で日本企業は健闘している。端末レイヤでは、成長中のスマートフォンやタブレットはほぼ完全に海外の独壇場である。一方で、プリンタやカメラにおいては日本は依然として優位性を保っている。

 これらを踏まえて、ICT産業におけるKFS(主な成功要因)が分析されている。その中で重要なのが国際水平分業(世界規模のサプライチェーンの構築など)による規模の経済の追求、意思決定の迅速化(世界での意思決定を集約して、スピードに対応する)、人材の開発・育成(20%ルールなど)、事業の選択と集中などを挙げている。また、成長市場の取り組みも重要であり、一貫したソリューションを提供する顧客の海外展開への追随と同時に、現地拠点や現地でのサポートの充実などの現地化も重要だとしている。

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