楽天証券経済研究所チーフストラテジストの窪田真之氏は先週、タイを視察した。現地の声などを踏まえ、タイ経済の現状と今後の展望、日本株への影響について考えてみた。
政治の混乱で経済が低迷したタイ
まず、タイ経済の過去の推移を簡単におさらいしよう。
<タイ実質GDP成長率(1980~2014年)、2014年はIMF予測>

(出所:IMFデータより楽天証券経済研究所が作成)
タイは、1980年以降、おおむね年率5%以上の高成長が続いてきた。1980年代後半から1990年代前半にかけて一時10%を超える高成長があったが、1997~1998年のアジア危機で頓挫した。その後は、成長率が5%に届かない年も多くなった。
経済が不振であった年について、背景は以下の通りだ。
- 1997~1998年:新興国(中南米・アジア・ロシア)経済危機
- 2001年:アメリカのITバブル崩壊による不況が影響
- 2008~2009年:2008年のリーマンショックの影響
- 2011年:タイ大洪水で工業地帯が深刻なダメージ
- 2013~2014年:政治の混乱によって経済が停滞
2013年11月からタクシン派と反タクシン派の対立が激化して政治が機能不全となった。予算執行も滞り、経済が停滞した。解決の糸口が見えない中、2014年6月にタイ国軍がクーデターを起こし、軍が全権を掌握した。現在、タイ国軍の任命した暫定政権が政策運営を担当している。なお、タイ国軍は、2015年中に総選挙を実施して民主政治に戻す方針を表明している。