--モバイルアプリの反響は。
アプリがウェブサービスよりよく使われているかどうかなどの効果を数値で比較することはできません。しかし、アプリはほぼ思った通りの成長曲線で伸びています。アプリは、実際に使用するシーンや機能を考えながら開発しています。アプリの場合、ダメだと思ったらユーザーはすぐに(アプリを)削除してしまいます。非常にシビアであり、どうすれば継続して使ってもらえるかを、徹底的に考えてからリリースするようにしています。これまでもウェブサービスの改善点をそれぞれを企画ディレクターをはじめ、各部署で判別していましたが、その目線やリソースをモバイルアプリ分野にフォーカスしています。
アプリが使われ続けるための工夫としては、(優位性よりも)「なぜダメなのか」を徹底的に考えて行動しています。これを「執着力」と呼んでいるのですが、ユーザーに使われる価値とは何かを徹底的に考え、それを機能として実装していく。それをやりきっています。そうすることで、たとえ伸びなくても知見が得られ、次に生かしていくことができます。チャレンジを繰り返して価値を上げていけるのは、サービスを提供している会社の強みです。
--クックパッドは決算などでは順調な印象があるが、CTOとして課題に感じていることは。
技術的な課題としては、技術が継続的に、しかも速く進化し続けていることです。そういった状況の中で、どの技術の波にいつ乗るかは重要なところです。たとえばインフラでは、クラウド上でソフトウェアからのアプローチでインフラを動かすことが当たり前にできるようになりました。新しい手法でシステム設計が可能になっています。どこで舵を取るか、そこの見極めが大切です。乗り遅れると変化に対応できないばかりか、逆に弱みになってしまいますので、徹底的に考えて判断し続けています。
--エンジニアが主体的にサービスや事業に関わるメリットとは。
クックパッドはテクノロジに強いイメージがあるかもしれません。しかし、技術に強いギークな会社ではなく、技術をユーザーにどう生かすかを徹底的に考えています。それは創業時から変わっていません。ユーザーが第一であり、ユーザーにどのように価値を提供できるかをエンジニアも常に考え、技術を生かそうとしています。そういう考え方の人がどんどんジョインしています。
--「徹底的」という言葉が出ているが、その考えを現場に反映させるために工夫していることは。
解りやすく伝える、と言うことを重要視しています。モバイルファーストに大きく舵を切る際にも、一人ひとりの社員と話をしました。また、社内に新しいシステム入れるときには、全体の情報のやり取りがスムーズにできるかを最優先に考えます。情報を扱う会社ですから、社内の情報のやり取りも解りやすく、スムーズにできる必要があります。それはユーザーに向けても同様で、誰にでもわかりやすく伝えることが必要です。常日頃から、技術にしても何にしても解りやすく伝えることを徹底することで、実現できると考えています。
--ビッグデータを使ったユーザーの行動分析などについてどのようにビジネスに生かしているか。
アクセスログと検索ログをメインに記録しています。特に検索ログは検索トレンドが分かるため活用しています。たとえば去年と比較して、流行が早いか遅いかなどもわかります。ビッグデータ分析には、SaaS型のデータ解析サービス「トレジャーデータ」を利用しています。色々なデータを入れるバケツのようなものですね。どのようなデータもとりあえず入れることができて、後から必要になった時点で分析できる点が使いやすいです。

旬のトレンドワードを見れる「たべみる」は食品製造業や流通、小売業向けのデータサービス。クックパッドの検索キーワードを対象に、食材・地域・ 季節・食用シーン (誕生日や運動会など) などのさまざまな切り口で分析ができる。1月よりビッグデータとしての提供を本格化したという。