丸紅は8月14日、複数ユーザーがタブレット端末をなるべく紙と同じ使い勝手のまま会議などを実施できるタブレット向けアプリを試験導入した。紙資料の廃止によるコストやコピー作業の削減といった効果に加え、紙を紛失した際の機密情報の漏えいリスク低減も見込んでいる。
導入したのはエーピーコミュニケーションズ(APC)が提供するiPad向けアプリ「PrinPad」。コンセプトは紙の使い勝手をそのままタブレット端末に再現することだという。PCから紙を印刷する機能をそのまま使うため、印刷と同じ操作で、対象ファイルをタブレット上のアプリ画面に表示できる。
会議資料や営業用のカタログ、ファックスといった紙の文書を複合機を経由してサーバ側で保持し、紙と同様にタブレットの画面に印刷するイメージで利用し、デジタル化できるのが特徴という。
コントロール共有により、1つの端末の操作をリアルタイムに複数端末で共有して見ることができる
加えて、Bluetoothを使い、複数ユーザーが、リアルタイムに更新される同じ画面を共有して閲覧することもできる。資料のページをめくったり、文字の手書きを同時に見ることで、情報共有がより効率化するとして、丸紅社内でも評価されているという。ただし、この「コントロール共有」機能は、Bluetoothの通信容量が制限になり、現状は4~5人までの利用に限られる。
このほか、PrinPadでは、資料をあらかじめ設定したグループごとに管理し、権限設定を施すことで、不正な保存や持ち出しができないようにできる。また、iOS 7に標準搭載された通信技術を利用するためのiBeacon端末を経由することで、ユーザーは自分のiPadを端末にかざすだけで必要なデータを受信するといった使い方も可能としている。
APCの執行役員でTDL事業部の事業部長を務める多田英起氏
ペーパーレスの効果は大企業ほど大きく、月間で億円単位のコストを支払っているような企業にとって、コスト削減効果はあなどれない規模になる。APCの執行役員でTDL事業部の事業部長を務める多田英起氏は「紙の資料を紛失した際に、それが“不正にコピーされていない”ことを証明するのは難しい。紙データの削減とデジタル化は、セキュリティ面の強化につながる」と指摘している。
ただ、PrinPadの活用方法は、ペーパーレスだけではなく企業によってさまざまな利用方法が考えられる。例えば、営業担当者が顧客に1台のiPadを渡し、もう1台のiPadもしくはiPhoneからコントロール共有機能を使って、資料や動画を使ったプレゼンテーションを実施するといった使い方が想定できる。
APCは、PrinPadの製品展開として「ライト版」と「エンタープライズ版」の2つを用意。ライト版はApp Storeからダウンロードでき、月額費用は税抜きで1人300円。エンタープライズ版は、100~200ユーザーで月額5万円程度を想定し、カスタマイズにも対応する。
丸紅は今後、モバイル端末やデータを管理する基盤である「Citrix XenMobile」とPrinPadの連携や共有グループの追加をしやすくするなどのカスタマイズ要望を伝えた上で、本番稼働する予定だ。
導入を担当した丸紅の情報企画部グループIT支援室の一瀬友里氏によると、当初は30~40人で利用を開始し、将来的には2000人が利用するシステムを想定している。