ここ数週間、ソーシャルメディアのタイムラインには、著名人とそれほど有名ではない人の両方が筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究を支援するという名目で、バケツに入った氷水をかぶる短編動画が途切れることなく流れている。現在までに氷水をかぶった有名人は、George W. Bush元米大統領、Bill Gates氏、Elon Musk氏、Lady Gagaさん、Nick Offermanさん、さらにはJustin Bieberさんなど。
米ALS協会(ALSA)は、米国時間8月24日午前現在で7020万ドルの寄付金が集まったと発表した。2013年の同期間に集まった寄付金は250万ドルだ。この「Ice Bucket Challenge」はインターネットで大きな注目を集めただけでなく、もっと重要なことに、資金調達の成功事例にもなっている。
では、インターネットで注目を集めるには何が必要なのだろうか。残念ながら、マーケッターは必ずしもその質問に明確に答えられるわけではない。何といっても、このチャレンジを最初に始めたのはALSAではない。CBS Newsは、最初はゴルファーの間で「ペットチャリティ」を支援するためにチャレンジが始まったと報じている。その中でプロゴルファーのChris KennedyさんがいとこのJeanette Senerchiaさんを挑戦者に指名。Senerchiaさんは夫がALS患者だったため、それをALSと結びつけながら挑戦に応じ、数人の友人を指名した。それから徐々に広がっていったのだという。
このキャンペーンを受けて、同じようなキャンペーンがほかにも登場するのは間違いない。それによって、似たもの同士のキャンペーンの影響力は必ず弱まるだろうから、今後のキャンペーンはIce Bucket Challengeを模倣しようとするのではなく、将来の独自の動画キャンペーンに応用できる部分に注目した方がいい。
GartnerのアナリストであるJennifer Polk氏は、Ice Bucket Challengeから最初に学ぶべきことは、説得力のあるメッセージを生み出すことの重要性だと述べている。ある企業ブランドがこのようなキャンペーンをうまくやってのけられる可能性は低い(例えば、朝食のコーンフレークが病気との闘いと同じ重要性を持たないことは明白だ)が、もっと広い範囲で考えると、動画キャンペーンによって何らかの反応を引き出すことはできるはずだ。
メッセージに説得力を持たせる要素の1つが共感である。一般的に、最も強烈な感情はユーモアと怒りの2つだ。マーケッターは怒りに訴えることを嫌がるものだが、Polk氏によると、例えばたばこ業界に反対するキャンペーンは怒りをうまく利用してきたという。後はユーモアだ。
「彼らが取り上げたのは、決して笑い事ではない病気と、決して笑い事ではない主張だが、それをとてもおかしな社会的行動と結びつけた」(Polk氏)
社会的行動という点について言えば、Ice Bucket Challengeには毎回、行動の呼びかけが伴う。動画内の人間が新たに3人を指名し、指名された人は挑戦に応じるかどうかを24時間以内に決めなければならない。
シアトルを拠点にソーシャルメディア管理ツールを手がけるMeshfireの最高マーケティング責任者(CMO)であるAmber Osborne氏は、次のように述べている。「これほどバイラル化したのは、仲間からのプレッシャーと時間制限という要素が追加されているからだと思う。友人から氷水をかぶるように言われて、それに応じなければ、罪悪感を覚える。決断を下す時間は24時間しかないので、『細かいことは考えず、やってしまおう』という気になる」