「iOS 8」の「HealthKit」がもたらすメリットとは--アップルのヘルスケア戦略 - (page 2)

Adrian Kingsley-Hughes (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2014-09-01 06:00

 これには、Appleにとって隠れたメリットがある。ユーザーデータはiOSの中に囲い込まれることになるので、ユーザーはこのプラットフォームに縛られる。そうしたデータがアプリやクラウドサーバ上に保管されていれば、ユーザーは別のプラットフォームに移行しやすいかもしれない。

 注意してほしいのは、ユーザーが別のプラットフォームに移行できなくなると言っているのではないということだ。ユーザーが自分のデータを抽出する方法がなければならないのは間違いない。しかしこのデータがiOSに囲い込まれていることと、多くの医療用デバイスがiOSに特化している事実を考え合わせれば、人々は今まで以上に、Appleのプラットフォームに囲い込まれることになる。

 ユーザーがiOSに縛り付けられるのは、現在市販されているヘルスケアアクセサリの多くがiOS専用だという理由もある。

 ヘルスケア分野には、ほかでは見られないような多様性もある。この分野は、フィットネスから医療まで、あるいは1日の歩数や体重といったちょっとしたデータから、血糖値や血圧のような重要な詳細データまで、多岐にわたっている。

 これをテレビや、腕に着用するコンピュータと比較してみよう。確かに、これらのデバイスには目新しさがあるが、Appleが作って販売しなければならないのはハードウェアだ。iOS 8に「Health」アプリを追加すれば、この新しい機能が、すでに流通している数多くのデバイス上で使えるようになる。同時に、Appleがバックエンドに追加するAPIは、さらに多くのヘルスケア関連のアクセサリやサービスを生み出すことになる。iOS 8によって、Appleは全く新しいハードウェアに専念する必要なく、既存のiPhoneやiPadシリーズの価値を高められるだろう。

 Appleのテレビやスマートウォッチが興味深く、革新的な製品になることは間違いなく、筆者は将来的に登場するそうしたデバイスを無視するつもりは全くない。しかし、iOSにヘルスケア関連機能を追加することはAppleにとって、短中期的にははるかに効果的だろう。なぜならそれは、既存のエコシステムの上に構築されるのであり、新しいエコシステムを育てようとするのではないからだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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