ノークリサーチは9月1日、SaaS活用提案の成否を左右するのは「訴求分野の選択」と「ユーザー課題の理解」であるとの中堅、中小ユーザー企業向け調査の結果を発表した。
基幹系、情報系などSaaS分野は今後も成長
SaaSを導入済み/導入予定のユーザー企業に「どのような分野のSaaSを導入済み/導入予定か」を尋ねたところ、最も割合が高かったる分野は「業務補完型サービス」だった。
業務補完型サービスはIT企業にとって有望
業務補完型サービスは、「業務アプリケーション本体は従来通りユーザー企業の社内で構築/運用し、それを補う形でSaaSを組み合わせる」という形態のSaaSを指している。具体的には「データ入力画面サービス」「ファイル転送サービス」「業務データ変換サービス」などが挙げられる。
この3つの業務補完型サービスについて、年商5億円未満における導入済みまたは導入予定のユーザー企業の割合を見ると下図のようになる。
この層ではシステム規模が小さいため、「社内設置型の業務システムとSaaSとの組み合わせ」を必要とするケースは少ないと思われがちだが、細かなニーズを的確にとらえた業務補完型サービスを選定すれば、訴求は十分可能であることが分かる。この傾向は、年商5億円以上の企業層においても確認できているという。
例えば、中堅・中小ユーザー企業が利用する基幹系システム(会計、販売、人事など)はクライアント/サーバ形態が多いが、規模が小さくても工場や営業所などの拠点を複数持つ企業は意外に多いという。
各拠点で会計や販売のデータを入力するためには、VPN(Virtual Private Network)などを用いて拠点にあるクライアントと本社のサーバを接続する必要があるが、データ入力画面サービスを用いれば各拠点はブラウザのみでデータを入力し、インターネットを介して本社サーバにデータをインポートできるようになる。
入力画面やデータインポートの仕組みは、ユーザー企業が導入しているパッケージやカスタマイズ有無によっては個別のインテグレーションが必要になる場合もある。だが、拠点のPCにクライアントモジュールを導入しないため、ユーザー企業にとっては管理/運用の負担軽減という大きなメリットが得られることから、十分に現実的な選択肢になるという。その結果、販社やシステムインテグレーターにとっては単にSaaSを販売するだけでなく、システム構築や運用の機会を得る契機にもなると考えられる。
SaaS活用における課題では「一時データの取り扱い」などきめ細かな要因も配慮が必要
SaaSを導入済み/導入予定のユーザー企業に対して「SaaS活用を阻害する要因/課題」を尋ねた結果は上図の通り(一部)。ノークリサーチでは、こういった課題を十分に理解し、それらを回避する形でソリューションを組み立てていくことが非常に大切であるとしている。
内容は、「2014年 SaaSを中堅・中小ユーザー企業に訴求する際の有望分野と課題に関する調査」結果の一部を公表したもの。日本全国のIT関連サービス業を除く全業種、年商100億円未満の民間企業において、企業経営もしくはITの導入/選定/運用作業に関わる職責の人物を対象として、2014年1月~7月に実施した。