自社がどのステージにいるかを理解する
筆者は、前述した話をさまざまな企業の経営層に説明している。「ポカーン」とする人もいれば、「うんうん」と頷いてくれる人もいる。少なくとも二年前は「エコシステムが重要です」と熱を入れて語るとポカーンとする人が多かったが、最近は初めは怪訝な顔をするものの、説明していくうちに、なるほどと理解を示してくれる人の割合の方が増えてきた。
というのも、海の向こうの話ではなく、日本企業でも「S」や「E」を意識し、形になってきているからだ。そういった日本企業の話をすると他人事ではなくなるようだ。ましてや同業他社のことであれば、なおさら放っておくわけにはいかない。
読者の所属する企業は、1~3のどのステージに属しているだろうか。同業他社のリーダー企業はステージを進めていないだろうか。
日本企業は確実に変化し始めている。まずは自らがどのステージに居るかを認識し、遅れていると感じたら、次のステージに進むためのアクションを取ることを推奨する。
筆者は第一段階から第二段階に進めない企業の多くは、従来からある企業文化やビジネスモデルを守るためのしがらみ、各部門間の危機感のズレから生まれる歩調の乱れによって、組織のキャズムをかえれない状態にあることが多いと見ている。
このような状態の組織がキャズムを超えるための施策として、筆者の所属する企業では「未来創造ワークショップ」を開催している。部門毎のキーマン、若手に選抜し、現場の課題を議論する。その解決に向かってどんなITが使えるかをディスカッションしてもらい、最後には部門長に改善案を提案してもらうというものだ。その提案をきっかけとして次年度からキャズムを超えるために一歩を踏み出すように促している。
第一段階から抜け出せずにいる企業は、一度上記のような「ワークショップ」の機会を作ってみてはいかがだろうか。
- 大元隆志
- 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を13年経験。異なるレイヤの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』など著書多数。