総務省が毎年7月に刊行している「情報通信白書」の平成26年版を解説する本記事、中編ではビッグデータ、オープンデータなどの「データ」を取り巻く事情について取り扱う。
活用が本格的に始まったビッグデータ
ここ数年で急激に活用されているビッグデータ。しかし、その現状や実際の活用方針を検討する上では、まだ明確な視点は定まっていない。「情報通信白書」ではビッグデータ活用を国単位のマクロ視点、個別企業でのミクロ視点の双方から分析されている。まず、実際にどのようなものが「ビッグ」になっているかの分析で、国際的なデジタルデータの量は2011年の1.8ゼタバイトから2020年には40ゼタバイトに達するとしている。
それを支えるインフラ基盤も、前記事で述べたように途上国を含めて急激に普及している。ハードウェア(CPU、ストレージ、ネットワーク)の性能が指数関数的に増加する傾向もまだ続いており、センサの量も指数関数的な増加が見込まれる。
データ流通量の13年度の調査では、非構造化データのうち監視や防犯カメラ、センサログ、交通や渋滞の情報、動画、映像閲覧ログが追加された。推計結果によれば、国内ですべての産業でまんべんなく13.5ゼタバイトのデータが流通しており、8年間で8.7倍の伸びを見せている。
種別としては新規追加された監視・防犯カメラ、センサログが多く、次に販売時点情報管理(POS)データが多い。生産関数モデルによるデータ活用の影響についての分析では、従来型のPOSデータなどの影響が大きいものの、新しいセンサデータなどやM2Mなどでは効果がいまだ見られていないものもあり、今後の活用が期待される。
「データ流通量の昨年度調査結果との比較」出典:「平成26年版情報通信白書」(総務省)原出典:総務省「ビッグデータ時代における情報量の計測に係る調査研究」(平成26年)
そんな中で、実際の企業でのビッグデータ活用はどのようなものか。マツダの例では、エンジンの部品の精度を上げるために部品1つひとつの製造作業と品質を記録し、分析することにより切削加工の精度を上げ、極めて高い圧縮率のエンジンを実現した。
また、本川牧場の例では、従来から個体識別にRFIDを用いていたが、収集した200~300項目に渡るデータをクラウドサービスを導入することで分析可能にした。その結果、牛乳生産量などの予測や出荷の最適化に結びつけることができ、中期的な投資計画にも貢献している。このほか、漁業や回転すしチェーン、バス事業、広告業などで、RFIDなどのセンサデータによる最適化がなさている。
「RFIDによる個別商品管理に基づく需要予測(あきんどスシロー)」出典:「平成26年版情報通信白書」(総務省)
ビッグデータ活用の中で重要な位置を占めるのが、「G空間情報(地理空間情報)」である。G空間情報はさまざまなデータを統合し、分析を可能にするインフラとしての特性を持つ。地方公共団体に対するアンケートでは、地理情報システム(Geographic Information System:GIS)の導入は進んでおり、防災、都市インフラ、観光などでの拡大を希望しているとの結果となった。
総務省では「G空間×ICT推進会議」を開催し、プラットフォームの整備を進めている。その結果、オープンデータやウェアラブル端末、ロボット技術との連携による新しいサービスの創出などが始まっている。
海外での取り組みについては、欧米、アジアともにビッグデータ関連予算を新規産業の創出、データ解析の専門職育成などがある。G空間情報については、GPSやGalileoなどの人工衛星のインフラ整備が民間への活用を踏まえて協議されている。