慎重な姿勢を保持しつつ、多彩なデータ活用には期待感
IoTの進展に伴い、今後いっそう比重が大きくなってくることが予想される要素としてオープンデータがある。
「当初、オープンデータは主に、官公庁が保有するデータを活用していくという概念が中心だったが、欧米では、さらに一歩話が進んで、(官公庁に限らず)公共性の強いデータはオープンにすべきであるとの考え方があり、一部企業などで開示の動きもみられる。もちろん、すべてをオープン化することは困難だが、開示によりその情報保有者が恩恵を受ける側面もあり、オープンデータ化が進んでいく可能性もあるだろう。例えば欧米の製薬業界では、自社の治験データをどんどん公開し、そこから生まれるアイデアからフィードバックを受けることができる」
木村氏は続けて、こうした見方を明かした。
「要するにデータを自分たちだけで閉じてしまっては、かえって活用の手立てを見つけ難くなるということだ。開示したことにより知見が集まってくる。今後、このような発想がさらに大きくなるかもしれない」
同社の戦略も具体化が進行し始めているが、市場への視線は慎重だ。「データを集めるところで一から始めようとすると、オーバーヘッド、初期投資がかさむことになる。民間レベルでいえば、効果が見えない段階で新たな領域に踏み込むのは難しい」との背景があるからだ。
そこで、「M2Mといえども、集まっているデータを、巧く活用していくことが第一歩となる。そこから、いろんな価値が出てくれば、次の投資につながるが、注意深い姿勢が求められる。いきなりセンサをばらまいて、何か始めようなどというのはそう簡単なことではない。農業などを除けば、機器側にデータがたまっていることも多く、それらを活用していけばできることはいろいろありそうだ」と見ている。
慎重ではあるが、M2M/IoTへの注力、具体的事業化を期した基盤整備には余念がない。
NECはこの4月、ソフトウェア子会社7社を再編し、NECソリューションイノベータを発足させた。新会社はNECソフトが存続会社となり、NECシステムテクノロジーや北海道日本電気ソフトウェア、NECソフトウェア東北、北陸日本電気ソフトウェア、中部日本電気ソフトウェア、九州日本電気ソフトウェアを統合し、SE、技術、ノウハウなど、分散していた経営資源を集約した。NECはNECソリューションイノベータを社会ソリューション事業を支える中核と位置付けている。
また、7月には、NECプラットフォームズが発足した。この会社は、キーテレフォン/IP-PBXやPOS端末などを扱う、NECインフロンティアやNECインフロンティア東北、ブロードバンドルータや車載機器などを担う、NECアクセステクニカ、サーバやストレージなどの開発、生産に従事するNECコンピュータテクノの4社を統合、共有化しており、コンピュータ機器から通信機器、端末・組込み機器までの開発や生産を一元化した。
こちらも、社会ソリューション事業を軸とした成長戦略を支える中核ハードウェア開発、生産会社として位置付けられている。
M2Mは、それ自体が目的ではなく、一手段だといえる。NECの場合「社会的な価値をもたらすために、技術や諸要素を統合化していくことが大きな意味を持つ。ただ、個別に垂直方向に進んでいくのではなかなかコスト的なメリットも出てきにくくなる。結局、全体的な設計を考え最適化していくことを進めなければならない」との考えが一貫している。