ウェザーニューズのアプリにおいても、雲の判定にAIを使っています。画像解析して積乱雲の判定をするのですが、それを使うことでユーザー側からも「危ないものだったんだ」という反応が返ってきます。楽しみながら雲の判定を学べるようになっています。一方的な情報提供はBtoBではよくありますが、BtoBの世界においても双方向の情報交換、コミュニケーションで問題を解決していくことは有効です。
特にBtoC、われわれは“BtoS(S:サポーター)”とと呼んでいますが、この分野ではコミュニケーションのウエイトが大きくなっています。互いにコミュニケーションしていく中で今の状況を把握して、これからの行動を決めていく。情報のやり取りを重視しています。
ウェザーニューズのインフラとしては、2015年に人工衛星の後継機が上がります。2013年の秋にも人工衛星を上げているのですが、故障してしまって本来のミッションができなくなってしまいました。ただ、地磁気センサが生きているので、人工衛星自身が発生する磁場を解析により取り除いて、高精度の地磁気観測ができるように仕立てて7月から観測しています。それは、磁気嵐が発生すると北極圏を通る飛行機の無線が使えなくなるので、航空機は北極圏を迂回するルートを飛びます。
そうすると、ロシアを通る場合には交渉が必要になってしまいます。通行料を払わなければならなくなるので、航空会社にメリットがない。そこで、磁気嵐が本当に起きているかどうかを確かめるようにします。理論的には検出できる精度まできましたので、あとは実際に発生したときに検出できるかどうかを検証するだけです。北極を通りたいという船会社はたくさんあるので、できるだけ早く船舶向けのサービスを強化するために、2015年の6~8月の打ち上げに向けて準備しています。
船体力学などの専門性も要求
--CIOの仕事とは。
どちらかというと交通整理的な立場で仕事しています。変な方向に行かないようにすること、変になったときにどう修復するか。そこがわたしたちの仕事です。システムがターゲットではありますが、基本は人間関係の橋渡しや調整が重要です。顧客もそうですし、協業相手も同じです。人間関係が悪くなるとうまくいかない。基本は人間関係だと思います。
個人ごとのモチベーションをどう上げるかには気を使っていますし、相性もあります。またシステム周りの人たちだけでなく、運用の人間も抱えています。運用に携わっていると仕事に向き合って閉じこもっていく傾向があり、気づくと過負荷になっていたり、精神的に弱ってしまうことが起きやすいので、注視しています。
サービスシステムは社内で作っていますが、重要なのは特定の領域に特化した分析です。その上でフィットするシステムを作ることが重要になるため、人材を厚くしています。サービス用システムの中で重要なものが、いくつか時間が経過してきているので、次世代システムに移行することも考えています。
--利用しているシステムについて。
最近は専門性が要求されるようになりました。それはたとえば船や飛行機の知識です。ウェザーニューズは造船工学や船体力学のプロではないですが、サービスを提供する上で知識を要求されるようになりました。そうするとウェザーニューズ単独ではできないため、造船業界の会社や大学の先生などをアドバイザーに迎えるなどの協業の動きも必要です。
システムは、一時期はリレーショナルデータベースなどを自前で開発していましたが、過去データの検索などでは市販のものを使った方が効率的です。基本的には自分たちがやりたいことに一番適合したものを作っていくスタンスです。その要素として既存のものを使うということはしています。システムは基本的にすべてPCベースで、PCにUNIXを入れたようなサーバがベースになっています。数値予測する場合は、それのクラスタでスーパーコンピュータの代わりをさせています。最近ではGPUベースにしました。
一般向けのサービスを提供する場合はアクセスが大きいので、急激なアクセス増が見込まれるときには外部の一時的なレンタルサーバや、アカマイのコンテンツ配信網(CDN)サービスなどを利用しています。以前はピークにあわせてサーバを用意していたのですが、あまりに無駄が多かったり、逆にピーク時に追いつかなかったりしたことも何回かありました。そのためテンポラリなレンタルサーバは絶対に必要です。いくつか検討して、その時点でコストパフォーマンスの一番いいものを選んでいます。