データベースは、データは時間の経過とともに過去のものになり、不要になっていくという発想でシステムを作っています。ストレージはわりと最近になって必要であることを意識しましたが、リアルタイムで常に更新されていくデータをどれだけ効率よくハンドリングできるかにフォーカスしています。リアルタイムデータを集めてきて次に流していくというシステムで、「NELSON」という名前がついています。
また、NELSONのアーキテクチャを「アメーバ」と呼んでいます。ひとつのハードウェアではなく、NELSONのコンセプトの中で同じようにいろいろなデータを扱うものが増殖したり、あるいは要らなくなって消えていくようなことができるアーキテクチャです。ただ、若干古くなっているので、そろそろ次期システムを考える時期に来ていると思っています。
基本的には、ネットワークで結合されたマシン群がそれぞれの役割を果たしている感じです。アーキテクチャが古くて効率が落ちてきていますから、マシンの台数が増えるとどこかしら故障したりします。それでも全体として動いていますが、常に誰かが手を入れてメンテナンスすることが多くなっているので、アーキテクチャを洗練させてマシン規模を縮小させても同じようなことができるようにしていくことが必要であると感じています。
システムを作る側のモチベーションを重視
--特に注力しているITの取り組みは。
(ITの取り組みというよりは)自社製品を売りたいがために(ベンダーが)作り出したトレンドに安易に乗らず、合理的に考えてITをもっとうまく生かせるやり方を常に模索することに注力することです。
最近はビッグデータが流行っていますが、すべてにおいてビッグデータ処理をする必要はなくて、既存の物理学などでわかっていることは、それを使った方がいいんです。そういう部分を取り除いて、関係がよくわからないようなものだけをビッグデータとして扱えば、それが鮮明な知見が出てくることがあります。メーカーは作為的にやらず自然にやれというんですが、そうすると100倍くらい時間がかかります。そこは本能的にわかる部分を見極めてやっています。
例えば船のリアルタイム情報をビッグデータ処理することがトレンドですが、船体力学的な波と抵抗の関係などは差し引いて、残りの部分で関係を見た方がより鮮明に見えます。線形の現象でわかっているものについては既知の法則を入れた方が明確に出てきます。そこは注意してみていますね。
--システムの検討の際に優先していることは何か。
作る側のモチベーションと、エンドユーザーの使い勝手があると思いますが、作る人間がモチベーションを持ってできたものとやらされてするのとでは、仕上がりが全然違います。高いモチベーションを持ってやれるアプローチで進めています。方向性は出しますが、作る側の意思を尊重しています。作ること前提ですね。各個人の価値観に任せているので、使う言語もバラバラです。
再利用とか他の人が見てわかりやすいというのは幻想ではないかと思うことがあります。もちろん簡単なものはありますが、複雑な仕掛けになると何をやっているのかわからなくなる。どういう思想でやっているかまではわかりませんから、「これが使えるから」と転用しようとするとうまくいかないんですね。コストや納期も重要ですが、そこを守るためにも人を生かさないとうまくいかないと思います。
--開発者規模は。
全社で約100人です。社員は世界で700人弱、日本は450人ほどです。日々のオペレーションや、サービスと気象情報の解析やっている運営が300人くらいですね。あとは営業、総務、財務などバックヤードになります。日本以外にはオクラホマとオランダのアムステルダムにも拠点がありまして、それぞれ70~80人くらいの運営担当がいます。あとは世界の販売拠点にセールス担当がいます。
昔は現地主義でいろいろなところにサービス拠点があったのですが、それぞれが勝手なことをするのでいったん集約しました。しかし今度は集約しすぎてしまい、オペレーションが苦しくなってしまいました。そこで時差も考慮して分散しようということで、現在の形に落ち着いたわけです。
--5年後の姿をどのように考えているのか。
どのくらいの“道”を見つけられるかになると思います。いろいろな業種の中で気象に起因するリスク、それを回避する対応策をどれだけ発見できるか。それさえコンスタントに見つけることができれば、まだまだいけると考えています。そこに力を入れないでいると、わたしたちのような気象会社ではないところが、APIと公開された気象データによって同じようなサービスができてしまいますから、参入してくるでしょう。
ビジネスが継続できるように、新しい天気のサービスやポイントをどんどん探していきます。同じところに競合が入ってきたら叩き合いになって値段が下がってしまうのは目に見えています。いかに新しいフィールドを見つけることができるか、新しい価値を見つけることができるか、そこが勝負です。