同氏によると、「AWSのサービスはクレジットカード決済などで手軽に利用できるのがセールスポイントの1つだが、当社のクラウドサービスは顧客ごとに最適な利用の仕方をきめ細かく提案することに注力している。そうした顧客ごとのきめ細かい提案内容が、顧客にとって選択肢となるようなステージを主戦場にしていきたい」という。
つまり、提案型営業が主流となるステージをつくることによって、AWSの勢いを押さえ込もうというわけだ。営業サイドならではの発想だが、果たして思惑通りになるか。小原氏の手腕が試されるところである。
「今後SaaS市場は特定分野での利用が増加していく」 (富士通マーケティング 生貝健二 代表取締役社長)

富士通マーケティングの生貝健二 代表取締役社長
富士通マーケティングが先頃、顧客企業を招待したプライベートイベント「富士通マーケティングフォーラム2014」を都内で開催した。生貝氏の冒頭の発言は、そのイベントのセミナーにおいて主催者挨拶としてスピーチした中で、今後のクラウド市場の見通しについて語ったものである。
富士通マーケティングは、富士通グループの中堅民需市場を担う中核会社として、「ICT分野のワンストップサービス実現による顧客の持続的な成長を支援する」ことを使命としている。具体的には「ICTのライフサイクル全般のサポート」「多彩な商品、サービスの品ぞろえの継続強化」「各分野のエキスパートによる顧客接点の強化」の3つを掲げている。
そうした同社を率いる生貝氏はスピーチの中で、事業の重点分野として、ICT基盤を軸にクラウド、ワークスタイル、事業継続、セキュリティの4分野を挙げた。ここでは、その中からクラウドに関する話を取り上げたい。
生貝氏はまず、国内のクラウド市場について、「2017年に1兆7000億円規模になるとみられている。これは2013年実績の約3倍にあたる」と説明。年間平均成長率では33%増となり、非常に大きな成長が見込まれていることを紹介した。
また、IDC Japanによる国内パブリッククラウドサービス市場規模の調査結果から、2013年の実績で1302億円だったのが、2018年には3850億円と約3倍になることを説明。内訳はIaaS、PaaS、SaaSからなるが、その中でもSaaSについて冒頭の発言にように、特定分野での利用が増加すると強調した。
生貝氏はそれを証明するかのように、同社で提供しているホテル向けSaaSの「GLOVIA Smart ホテルSaaS」の実績推移を示し、2011年から2013年までのホテル稼働室数がほぼ倍増していることを説明。「今後、さらに伸長していくと予測している」と語った。
こうした予測をもとに、同社ではこの4月から“細業種”向けSaaSの「AZCLOUD(アズクラウド)」を提供開始。現在は食品向けとビル/マンションの設備点検向けの2種類だが、今後順次拡大していく計画だという。
今、パブリッククラウドサービスではIaaS市場の激戦ぶりが注目を集めているが、特定分野向けSaaSが増えてくれば、まさしくSaaS市場が最大の激戦区になるのではないだろうか。生貝氏の話を聞いてそう感じた。