Gartnerが「5年後にはマーケティング責任者がIT責任者よりも多くのIT予算を使うようになるだろう」との見通しを2012年2月に示してから、ちょうど半分の2年半が経過しました。その間に、マーケティングはデジタル化の流れが加速し、この予測の実現可能性も高まっています。
本連載では、テクノロジの進化が現代のマーケティングに与えている影響と、その具体的なシステムを検証し、IT部門担当者として今このタイミングでおさえておくべきことを「マーケティングオートメーション」を切り口にまとめることを趣旨としています。連載1回目は、マーケティングに訪れているデジタル化とはどういうことなのかを背景も含めて整理したいと思います。
これまで企業のマーケティング予算は、広告費用、店頭販促費用、販売代理店への報奨金など、ITとはかけはなれたところに投入されていました。米国の百貨店ビジネスを展開したJohn Wanamakerの言葉「広告費の半分が無駄なことはわかっている、問題はどちらの半分かがわからないことだ」の通りでした。
検索連動型広告の衝撃
それが今、デジタル化によって大きく2つの点について変わりつつあります。1点目は、ターゲティングの方法が変化しその精度が向上してきていること。2点目は、これまで直接的に測ることが難しかった「成果」について、見える化が進んできたことです。
この流れのきっかけは、Googleが始めた検索連動型広告です。この「広告」は、出稿の方法が従来と大きく異なります。通常の広告では、ターゲット含有率といってその広告媒体に本当に自社が狙いたいターゲットがどのくらい含まれているかという指標を参考にして、出稿媒体の選定やその量を決めています。
テレビCMを出稿する際に、その番組を見ている人々の属性を想定し、その中の真のターゲットの比率を見積もるというわけです。これに対し検索連動型広告の場合は、その属性が「◯◯というワードを使って検索した人」というとても特殊な情報になります。この情報を参考に相手の知りたいことや興味分野を想像して、それを目掛けて広告を出すことができるようになりました。
また、従来の広告に多かった、出稿した後の影響や成果はよく分からないといった状況を一変し、広告が表示された回数、広告に対して反応が得られた回数、その反応がきっかけとなって売れた金額、そして、それにかかった広告費がすべて見えるようになったのです。これは従来のテレビCMや雑誌広告などではありえないことでした。
検索連動型広告が2000年に始まって以来、これらのターゲティングの精度向上と、成果の見える化の拡張は、マーケティングのデジタル化の流れを支える大きな要因になっています。
PCやブロードバンド、スマートフォンの普及にともなって、世の中の人々の情報行動は大きく変わりました。以前は、情報の大半は、好むと好まざるに関わらず受動型でインプットされていました。
もちろん、テレビを見るという行為自体は能動的なのですが、そこで流れてくる情報はこちらが選んだものではなく、その瞬間に知りたい情報とは限りませんでした。能動的な情報行動としては、図書館へ行って調べる、書店へ行って関連しそうな書籍を購入し読む、詳しい人に尋ねるなど、少し手間のかかる行為しかありませんでした。
これがネットの検索エンジンによって大きく変わったことは説明不要でしょう。劇的な変化なのですが、この10年で早くも一般化し、変化したという事実自体を見落としがちなほどです。