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記事集:クラウドのネットワーク監視

カギはAPIとマイクロサービス--Bluemix開発コンテストに見るシステムの未来 - (page 2)

怒賀新也 (編集部) 田中好伸 (編集部)

2014-09-18 07:30

クラウド+アジャイル開発の行方

 IBMはこの1年の間に、企業の情報システムのあり方として“System of Record(SoR)”と“System of Engagement(SoE)”を提唱している。SoRは、統合基幹業務システム(ERP)のように社内の業務を処理するためのものであり、SoEは顧客とのつながりを深化、拡大するためのものだ。IBMでは、SoRとSoEの間でやり取りを拡大させて企業のビジネスを変革させていくという“System of Interaction(SoI)”を目指すべきとしている。

谷口展郎氏
NTT 研究主任 谷口展郎氏

 こうした論理を踏まえて薮田氏は「当面、BluemixにSoRは載らないだろう」と指摘した。BluemixはSoEとの距離が近く、「基幹系のようなシステムとBluemixは遠いところにある」との見方を示した。「Bluemixは基幹系には向かない。2週間や1カ月で開発、実装のプロセスを回すシステムと半年や1年をかけて開発するようなシステムでは時間軸が違いすぎる」(薮田氏)

 そのような認識を示す薮田氏だが、システムインテグレーター(SIer)や企業のIT部門にとって「Bluemixは(今までとは)違う世界を見せてくれることになる」と指摘。Bluemixが、これまでのIT部門が見ていたものとはまったく別の世界をもたらす可能性があると表現した。

 薮田氏が指摘したように、PaaSはシステム開発のメリットを企業にもたらすことができる。横塚氏は、クラウドやアジャイル開発を取り巻く、現在の議論に不安を感じている。「クラウドは安いか高いか、アジャイル開発が速いか遅いかというのは本質的な議論ではない」と現在の議論を批判した。

 横塚氏は、クラウドとアジャイル開発はどちらにもポテンシャルがあり、システムを少しずつ良くすることができるものと表現した。今回の開発コンテストでも、そのポテンシャルが高いものであると示したという。SoRとSoEの違いに触れながら、横塚氏はシステムの将来像を以下のように予測した。

薮田和夫氏
富士通 SI技術本部 チーフアーキテクト 薮田和夫氏

 「これまでのシステムは一般的に、例えば保険契約を交わした後のものと言える。これからのシステムは、保険契約を交わす前、あるいは保険契約を交わしている最中のためのものになるのではないか」

 続けて横塚氏は「これからの業務システムは“さくっと楽しく”という風になってほしい」とも語った。

注目されるAPIの多様性

 今回の開発コンテストのBLUECOUPONやChirpbox、Sleeffを見れば分かるように、クラウド上でAPIを組み合わせるのは便利であるだけでなく、手間やコストがかかりにくい。今後のシステムは「そうならざるを得ない。これはオンプレミスではできない」(横塚氏)。これからのシステムは「クラウドを前提にしている。“クラウドかオンプレミスか”という下らない議論はやめてほしい」と横塚氏は現在の一般的な風潮を批判した。

 「APIを組み合わせるのは現在の流行」と話す山名氏は、今回の開発コンテストの選考に残った「14件のうち3割が大学発」だったことに触れて「思っていたよりも多い」という印象を持った。大学でプログラミングの講義などを担当する山名氏は「プログラミングする中で学生同士でポジティブなフィードバックがもたらされることでアジャイル的に展開できるようになっている」と説明した。

 「実際に使ったユーザーからのフィードバックがあると、より良くなる。クラウドのいいところは書き換えられ、反映できることにある。Bluemixは講義で使えるようになっていて、学生からの反応は“簡単にインプリメントできる”と好評だ」(山名氏)

 選考に残った14の作品を見て新野氏は「いいアプリに共通しているのは、アイデアはもちろんのこと、APIの面白さにある。“こんなAPIを組み合わせたのか”という面白さがあった」と表現した。Sleeffのように「こういうのがあるのか!」というAPIを組み合わせることで楽しいサービスやアプリを開発できるようになっていると、APIの可能性が広がっていることを示した。

 「Twitter上で話題になっているテレビ番組を見つけてくるAPIなど、APIは多様性があって面白い。APIは社内の業務システムにも広がっていく可能性がある。社内システムのパラメータをAPIで取れるようにすることで、例えば顧客に対する指標や従業員の満足度を測れるようになるかもしれない」(新野氏)

 これまでの業務システムは、まず初めに要件を定義してから開発する。APIの可能性に期待を寄せる新野氏は今後「APIとアイデアをベースに開発して、社内の人気があったものを改良していくということもあり得る」という可能性を挙げた。

 ここで課題となるのがマインド、カルチャーだという。これには、横塚氏も同意を示した。

 「今までは“作りたいものをはっきりさせれば、きっちり作ります”というのが、IT部門のマインドセットだった。これからは全然違うマインドセットを持っていないといけない。今後は、一括請負契約やウォーターフォールがあり得ない領域が出てくることになる」(横塚氏)

 横塚氏の意見を受けて新野氏は「BluemixみたいなプラットフォームとAPIを組み合わせて遊ぶことで、面白いサービスや機能を開発できるようになっている」と説明。その遊びの中から業務に使えるシステムを開発できると、PaaSとAPIにある潜在能力を指摘した。

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