「Bezosの法則」
最近、一部のアナリストの間で、「Bezosの法則」という言葉が流行っています。これは、Amazon.comの最高経営責任者(CEO)Jeff Bezos氏の名前を取っていますが、決して本人が語っている法則というわけではなく、業界アナリストが独自に命名したものです。
この法則は、昨今のクラウド市場の価格の推移を、何らかの形でモデル化を試みようとして出てきた理論です。AWSが大方の値下げ戦略をけん引していたため、アナリストは、過去のAWSのコスト戦略を分析しながら、ある一定の法則を見いだした、というのが経緯です。
このBezosの法則によると、クラウドサービスの価格は、3年の間に半分に下がる、という法則が見いだされ、今後もクラウドの価格はこの法則に基づいて推移する、といいます。
AWSは操業2006年から、数々の値下げを断行し、過去の価格を分析すると、次の表のように、3年ペースで半額に落ちていることが見えてきます。これがBezosの法則の根拠です。
これが永遠に続き、クラウド事業のマージンが限りなくゼロに近づくかどうかについては意見が分かれるところであるが、何故、このような値下げが現実的に可能なのかどうか、について、少し考えてみたいと思います。
なぜ値下げできるのか
一番の根拠とされているのは、AWSのデータセンターのコストの主要を占めている、ハードウェアのコストが年々下がっているという事実です。
Google Cloud Platformが発表された3月のイベントで、シニアバイスプレジデント のUrs Holzle氏のプレゼンテーションでデータセンターで使われる 、ハードウェアのコストが毎年、20~30%のペースで下がっている、と言明しています。下記のスライドがそれを説明しているのですが、このスライドでは、ハードウェアのコストが下がっている割には、パブリッククラウドの価格が対応して下がっていない、とも説明しています(ここが上記のBezosの法則と数字がかなり違いますが)。
ハードウェアのコストが毎年20~30%のペースで下がっているとなると、これは3年で34%~50%のコスト削減に相当します。つまり上記のBezosの法則に対してほぼ同等の数字を指しており、ある意味では、つじつまが合います。
もちろん、これは単に2つのベンダーから抽出した情報だけで出している数字なので、より総合で定量的な調査や分析がないと、真偽の程は判断しにくいと思いますが、少なくとも、対AWS、Googleの価格戦略を策定する上では、考慮すべき数字です。