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クラウド市場深読み分析:AWSが42回値下げできた理由 - (page 4)

鈴木 逸平

2014-10-06 07:00

TCOI(Total Cost of Infrastructure)

 少し話題を変えて、企業内のデータセンターについて少し解説をしたいと思います。よく、企業内のIT資産を評価する上で、データセンターを自社費用で構築すべきか、リースすべきか、それとも、ホスティング事業者にアウトソースすべきか、判断をする必要があります。その時に、判断する要素として、TCOI(インフラの総保有コスト)という指標を使います。

 TCOIは一般的に、データセンターを運用する上でかかってくるコストすべてを計上しますが、次のような項目が代表的なものとしてあげられます(数字はIBM調査結果から)。

  • 55%:データセンター自体のファシリティコスト+機材コスト(冷房などの空調 や電力供給源など)+電力コスト
  • 30%:人件費(運営や保守など)
  • 35%:IT機器コスト(←Google Cloud Platformの発表で説明された部分)

 もちろん、TCOIを下げることが重要な課題になってきますが、このレイヤでのTCOIを減らすための最も効果的な要素として、いわゆる電力使用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)を下げることがよく挙げられます。PUEを低減する効果的な手法として、フリークーリング型データセンター(冷却に電力を使用しない方式)とか、高集約型サーバ(狭いラックにできるだけ大量のCPUを詰め込む)など、データセンター業界では、ここ数年活発な市場になってます。

 クラウドコンピューティング事業になると、上記のTCOIの内容がかなり変わってきます。

 クラウドコンピューティングでは、単なる汎用的な仮想マシンとストレージのサービスを提供するだけではなく、そのさらに上の層の付加価値サービスを提供することが重要なビジネス要件になります。

なぜクラウドベンダーはTCOI追求だけではいけないのか

 この新しい、付加価値サービスというものは、まだクラウドコンピューティング業界が黎明期にある今日、決まった方法論が定まっているわけではなく、各社が独自のサービスを次々を出しているのが状況です。

 この付加価値サービスのクラウドコンピューティングの真の価値が存在するのであれば、いかに、誰よりも速く良いものを出していくかが事業として最も重要な課題になっていくはずです。上記のデータセンター業界に特化したTCOIを追求する方法論もありますが、それはむしろ当然のことであって、競争力をつける要因にはなり得ないという認識が大事なのではないかと考えます。

 AWSが市場シェアを大きくのばしていった要因は、彼らのEコマース事業から培った、価格戦略が功を奏したのではなく、むしろ常に新しいサービスを提供し続けている、イノベーションをし続ける事業戦略とその力にある、と評価すべきだと思います。

 イノベーションが起きるとよく“Disruptive”という言葉が併記されます。これは、新しいイノベーションの登場によって、今までのモデルの破壊が併せて起こる状況を指します。クラウドという全く新しいITプラットフォームにおいて、革新的なサービスをドンドン打ち出すことが旧来型のレガシー資産をDisruptし(打ち壊し)、クラウドへ移行を促進する意欲をユーザー側から起こしている、と言えると思います。

鈴木逸平
現在、日米クロスボーダー事業を専門とするコンサル企業、Suzuki Consultingを立ち上げ、北米ハイテク企業の日本進出のアドバイザリー業務を展開。対象分野は広く、クラウド、ビッグデータ、アナリティクス、 IoTなど、次世代ITの先進技術を発掘し、誰よりも早く日本市場に展開できる事が強み。頻繁に日本出張する傍ら、普段はCA州に在住し、北米IT企業との強いネットワークを維持している。

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