クラウド市場深読み分析:AWSが42回値下げできた理由

鈴木 逸平

2014-10-06 07:00

 今回は、北米を中心としたパブリッククラウド市場について最近3カ月の動向を整理し、分析します。

価格戦略

 まず重要な動きとして、各社が実施している、価格戦略の動向です。特に顕著なのは、パブリッククラウド大手のAmazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform、そしてMicrosoft Azureの3社です。各社ともに、明確に「価格競争には対抗する」と宣言しており、実際にいずれかが値下げを発表すると、それに対応する形で他2社が値下げに対抗しています。

 今までは、AWSが値下げのトリガーを握っていました。既に、42回の値下げを断行しており、その度に、Google、Azureが同等の値下げを発表しています。


 ちなみに、AWSは6月の第2四半期の財務報告で、「その他」事業(主としてAWSの業績を指すものとして市場では理解されています)の売り上げがダウンしたことを発表しています。

 過去に売り上げはダウンしたことはあるが、第2四半期でダウンしたのは初めてで、これもGoogleの戦略的な値下げに対抗した結果、生じたもの、と市場では解釈されています。

 値下げの内容は次のようなものが多く、それぞれの目的について分析しました。

 ストレージインスタンスの値下げ 小規模なエンドユーザー層(特にスタートアップ、企業内の小規模プロジェクトなど)を早期に取り込み、エンドユーザーのクラウドへの依存度をデータをどれだけアップロードしているかをKPIとし、そのデータ管理コストを下げるための戦略的なものであると考えられる。

 AWSは従来のS3の価格を大幅に下げるとともに、新サービスとして大企業向けストレージ「Zocalo」を発表し、台頭しているストレージベンダー(特にDropbox、Box)に対する戦略を打ち出している。上位のサービスとの抱き合わせで、事実上、ストレージサービスを無償化する戦略(詳細後述)。

 エントリーレベルのCPUインスタンスの登場 小さなインスタンスを提供することにより今年になって、その動きに少し変化が出てきています。Google Cloud Platformを発表した3月25日、Googleは大幅な値下げを敢行しました。従来、AWSがいつも先行していた値下げ戦略に対して、今回はGoogleが先にトリガーをかけたということです。

 自社クラウドインフラにロックインする戦略 Googleの発表では、従来の最小のインスタンスよりさらに27%安いインスタンスが発表され、すぐさま、AWSやHP Helionが対抗策として同等金額のインスタンスの提供開始を発表しています。

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