日立製作所は9月25日、データ連携やウェブシステムなどを含む企業のシステム基盤のパターンに応じ、同社のミドルウェアを組み合わせ、構築運用を含めたアウトソースを請け負うクラウド型の従量課金サービスを10月1日に開始すると発表した。
サービス名は「Hitachi Integrated Middleware Managed Service」。企業が新たな業務サービスを提供するためのシステム間連携の基盤や、業務サービスを実行する基盤を構築、運用する際に、システム間連携の形態や連携させるウェブシステムなどの特性に応じてあらかじめ備えたシステムパターンと基盤ミドルウェアを最適に組み合わせる。その上で、システム基盤の構築から運用まで、各種クラウド上で従量課金で提供する。
10月1日は第一弾として、システム間のデータ連携基盤の構築から運用まで対応するデータ連携基盤サービスを提供する。
開発を指揮した日立製作所情報・通信システム社ITプラットフォーム事業本部開発統括本部、ソフトウェア開発本部システム基盤ソリューション部の担当部長、更田洋吾氏
ビジネスの変化への素早い対応
近年、変化の激しいビジネスに対応するため、商品の需要動向などを分析、察知し、潜在的ビジネスチャンスを確実にとらえて売り上げにつなげるといった考え方に注目が集まっているという。
企業の業務データをクラウド上で連携したり、ビッグデータ処理技術を利用して大量データから知見を見出す取り組みが進んでいる。
こうした状況で重要なのは、鮮度の高いデータを素早く入手し、簡単に処理できるシステム基盤を利用することという。だが、従来のように個別最適の発想で開発されたシステム間では、データ連携時に、データフォーマットを統一するための新たな変換処理が必要となったり、複数システムからのデータを収集するために新たな開発が必要になったりといったことが課題になっていた。
日立は今回、より迅速で柔軟に情報を活用したいというニーズに対応した従量課金サービスを提供する。
開始するIntegrated Middleware Managed Serviceは、プライベートクラウドなどの上でデータ連携のミドルウェア製品を従量課金で提供する。また、データ連携システムやプロセス連携システムなどシステムの目的やパターンに応じて、システムの特性を整理、分類したシステムパターンに必要な日立のミドルウェア群と関連するオープンソースソフトウェアなどをあらかじめ最適な形に組み上げる。
さらに、日立が持つミドルウェア開発をはじめとするシステム構築や運用ノウハウを基に、設計、検証済みのシステム定義パラメータや構築、運用ツールなどを利用し、構築から運用に至るサービス全体をサービスとして提供する。
同社は、新サービスについて、いくつかの利用シナリオを想定している。
ビッグデータ解析による鮮度の高い迅速な情報活用
従来、複数の業務システム間でデータを連携するためには、各システムからデータを収集し、データ変換するための統合データベースを新たに構築することが多かった。そのため、データのリアルタイム収集や、システム間で異なるデータ形式を変換する際に、大きな手間を要することが課題になっていたという。
新サービスでは、連携対象となる既存のデータベースそのものには手を入れず、更新ログからデータを抽出することで、データ連携のための新たな統合データベースの構築を必要とせず、いわば仮想的に統合したデータベース上で、データを統合できるようにした。
また、この仮想的に統合したデータベース上で、M2M(Machine to Machine)分野の情報収集、配信で実績のあるビッグデータ処理技術を活用した変換マッピングを行うことで、容易なデータ形式変換を可能にするという。
これにより、データ収集用のバッチプログラムを業務システムに追加、変更するなどの開発、保守の手間を削減するほか、既存システムへのシステム的な負荷も抑えられ、鮮度の高い迅速な情報活用を図れるようにする。
DBの更新ジャーナルを解析することで、更新タイミングを即時に検知
基盤構築と運用を効率化し、簡単な情報活用を実現
新サービスでは、業務システム間でデータやプロセスを連携するミドルウェア群と、構築時に必要となる各種システム設計パラメータ一式をあらかじめ検証済みのシステムパターンとしてまとめたものをベースに構築、運用する。
例えば、各種の業務システム間をつなぐためのデータ連携やプロセス連携などのパターンを用意し、これらのパターンを基に日立のクラウドサービスプラットフォーム「Cosminexus」でシステムを自動構築する。これにより、効率的なシステム構築を実現するとしている。
また、構築したデータ連携基盤の運用をシステム運用管理ソフトウェア「JP1」の障害予兆検知やリソース監視などの機能を用い、効率的に運用する。このほか、関連するオープンソースソフトウェアなどを適用してサービスを提供する。
同サービスにより、従来は複数システム間でデータ連携が制約になっていたようなケース――例えば、生産ラインの棚残情報を一元的に把握するのが困難であったために、必要以上に在庫を抱えていた点を解決したり、現地の別拠点から商品を配送すれば対応可能であった点がシステム上で把握できず、本社拠点から配送していたなどの課題を解決できるとしている。
今後日立は、ウェブシステムやバッチなどに対応するシステムパターンを拡充する。