ところがPayPal社内では、Appleとの話が進んでいる最中にSamsungとの提携話も持ち上がり、後者を推すeBayの最高経営責任者(CEO)、John Donahoeと、前者の旗振り役だったPayPalのプレジデントだったDavid Marcusとが対立。結局、この争いではDonahoeに軍配が上がり、Marcusは今年6月にFacebookに移籍してしまった。
Donahoeの意向で進められたSamsungとの提携が実現したことを受け、Samsungは今年前半に「Galaxy S5」に指紋認証と決済を組み合わせた機能を搭載すると発表。そして、この取り組みに「PayPalが一枚噛む」と聞いたAppleがカンカンに怒って、Apple Payを巡る話からPayPalを完全に閉め出すことにした、などとBank Innovationには書かれてある(せめて、Appleの発表を待ってからSamsungと組むことにしていれば…という感じもしなくはない)。
[PayPal Lets You Shop And Pay With Your Fingerprint On The Samsung Galaxy S5--PayPal]
(このビデオの公開日が5月28日で、David MarcusのFacebook移籍発表のニュースが出ていたのが6月9日だから、おそらくその前後の時期にだいぶ動きがあったものと想像できる)
[CNET News--Apple turns iPhone 6 into mobile wallet with Apple Pay]
Appleとの取引が売上全体の7~8割を占め、同社に生殺与奪の権利を実質的に握られてしまっているという供給業者の話などは、昔から何度か見聞きした覚えがあるが、その意向が(下請け企業などではなく、外部の歴とした)上場企業の大きな経営判断まで左右した例というのはあまり聞いたことがなく、そんな珍しさも手伝ってちょっと紹介してみた次第である。
(敬称略)
- 【参照情報】
- PayPal Spin Off Is All About Apple Pay
- The Real Reason PayPal Isn't an Apple Pay Preferred Partner
- Carl Icahn: Now PayPal Needs To Buy Or Merge With Another Payments Company
- Time to Monetize Messenger? PayPal's President David Marcus Jumps to Facebook to Run Messaging Unit.
- Why Apple Inc. Excluded eBay's PayPal From Apple Pay