オムニチャネルというワナ

オムニチャネルではチャネル統合も実店舗も無視していい - (page 2)

伊藤圭史

2014-10-20 11:00

東急ハンズの在庫統合は顧客目線から生まれた

 一方、在庫統合というオムニチャネルの定番施策を日本でいち早く推進して注目を集めているのが東急ハンズです。

 2010年3月に店頭在庫を教えてくれるTwitter bot「コレカモ」を開始し、現在は10万アイテムを対象にネットストア上から店頭在庫を照会できるサービスを提供しています。これにより、顧客はウェブから各店舗の在庫情報が確認でき、また、取り寄せもできるため効率的な買い物ができるようになっています。

 この事例では当然在庫統合の手法が注目を集めるわけですが、非常に興味深いのが「実は東急ハンズ担当者が誰一人としてオムニチャネルという言葉を知らずにこの取り組みを進めていた」という点です。よくよく考えれば、彼らが検討を始めた2010年当時、オムニチャネルという言葉は日本ではほとんど知られていなかったのですから当たり前といえば当たり前です。

 では、なぜ取り組みを開始することができたのでしょうか。このような返事が返ってきました。

 「顧客に必要とされたから」

 非常にシンプルでした。

 元々東急ハンズは、顧客から在庫を確認されることは多く、店員が店舗間で在庫を確認しあうオペレーションは以前より普通に行われていました。このサービスは便利である一方で、「店頭に行かないと在庫の有無がわからない」という課題を抱えており、在庫がなくて別店舗に行ってしまう等といった機会ロスが生じていました。

 この顧客のニーズに応えるための施策がコレカモnetでした。

 在庫照会機能なのにキャラクターがレコメンドをくれるというユニークなアプローチは、実は当時の在庫DBでは東急ハンズの全全アイテムの内、1割程度しか照会できないという課題は抱えていたのですが、状況に起因するものだったのですが、この苦肉の策が逆に功を奏し、twitter(ウェブ)を使った在庫確認は電話よりも気軽に聞けると顧客から支持を得て、「かなり使われた」(東急ハンズ担当者)のでした。

 この結果が「ウェブとリアルをより強くひもづける、融合させる仕組み」作りの機運が盛り上がり、社内理解を促進し、現在オムニチャネルの流れでも「先駆的」と各所で取り上げられるまでの在庫管理システムが生まれるに至ったのでした。


「コレカモnet」

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