オムニチャネルというワナ

オムニチャネルではチャネル統合も実店舗も無視していい - (page 3)

伊藤圭史

2014-10-20 11:00

Amazonのオムニチャネルには実店舗が存在しない

 ECの雄であるAmazonも実はオムニチャネル対策に大きな投資を続けています。

 「Amazonは実店舗を出すのか?」あるいは、詳しい方だと「Amazon Lockerの拡充か?」と思われるかもしれませんが、そのような発表や予兆は少なくともこの記事を執筆している時点では出ていません。楽天が実店舗を出したことからもわかるように、EC事業者であるAmazonにとって「店舗力の獲得」が魅力的であるのは間違いありません。しかし、彼らは別の道を選びました。

 それが、スーパーやコンビニ需要の獲得です。

 日本で計25兆円超を誇る巨大市場は過去「タイムラグ」という壁によって守られた、実店舗にとって聖域とも呼ぶべき領域でした。(翌々日の夜ご飯のメニューを決めて、PCを開いて卵を注文するなんて想像するだけでうんざりしてしまうわけで……。)

 オムニチャネル化が生み出す消費者行動の変化と物流の進化は今、この聖域の壁(タイムラグ)を崩しつつあります。

 Amazonは「Amazon Phone」と「Amazon Dash」で顧客ニーズとの距離を最小化し、「配送ロボDrone」や「投機的配送」によって発注から配送をスピードアップすることで、このタイムラグの壁を乗り越える試みを進めています。

  • Amazon Dash... 注文専門の棒状端末。欲しい商品を口頭で伝えるとAmazonに発注がかかる
  • Amazon Phone... Amazon連携を徹底的に追求した端末。音声のほか画像でもAmazonに発注ができる
  • Drone... 配送専門の飛行型無人ロボ
  • 投機的配送特許... 地域別の発注予測に基づき予め商品を配送しておく仕組みの特許。2013年に米国で成立

 後者2つは未だ実験段階にありますが、前者については既にニューヨークで食品の定期配送サービスを開始するなど実用化が進みつつあり、彼らがスーパーやコンビニの脅威となるのはもはや時間の問題であると考えるべきでしょう。


2つのタイムラグがあったのをAmazonは崩そうとしている
※スーパーの平均的距離とかから推測できるか?

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