本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAS Institute Japanの吉田仁志 代表取締役社長と、シマンテックの安達徹也 上席部長の発言を紹介する。
「予測型アナリティクスは、未来を当てるのではなく、未来を変えるものである」 (SAS Institute Japan 吉田仁志 代表取締役社長)
SAS Institute Japan 代表取締役社長 吉田仁志氏
SAS Institute Japanが先ごろ、ビッグデータ・アナリティクスをテーマにしたプライベートイベント「SAS All Analytics 2014」を都内で開催した。吉田氏の冒頭の発言は、そのフォーラムのオープンニングスピーチで、企業における予測型アナリティクスの効用について語ったものである。
吉田氏はまず、ビッグデータの特徴を表す言葉として、「Volume」「Velocity」「Variety」といった「3つのV」があると説明。すなわち、大量で迅速かつ多様なデータを保有できるようになるということだが、当然ながら企業にとってはそうしたデータを保有し整理するだけで相当のコストがかかる。では、データをコストと見るだけでなく、戦略的資産として活用していくにはどうすればよいか。
「その手段がまさしくアナリティクスである」と言う吉田氏は、「データを分析することによって、そこから価値のある情報を引き出すことができる。その意味で、アナリティクスはビッグデータに4つ目のVとなる“Value”をもたらすものとなる」と強調した。
さらに吉田氏は、「企業がアナリティクスを活用するのは、今や当たり前になった。最近ではその質の高さが一層求められるようになってきている」と説明。その質となる機能が「予測」である。同氏は予測型アナリティクスについて、従来のビジネスインテリジェンス(BI)と比較する形で次のように解説した。
「BIは経営の“見える化”を図れるということで、多くの企業が利用するようになった。が、これは車の運転に例えると、バックミラーやサイドミラーなどの小さな窓から過ぎ去っていく状況を見ているに過ぎず、その後の運転に役立つ情報をもたらすわけではない」
「例えば、渋滞に遭遇した場合、自分の車の位置を確かめて、その先にどのような渋滞の原因があるのか、回避するためにはどのような方法があるか、といった情報をドライバーに提供するのが、予測型アナリティクスである」
ただ、その予測は常に当たるものなのか。同氏はそう問われることもあるという。そうしたときに、「予測型アナリティクスは、未来を当てるのではなく、未来を変えるものである」ことをきちんと説明するそうだ。ちなみに「未来を変える」とは、適切な選択肢を提示し、意思決定に役立てることを意味しているという。