ソニー系企業のプロフェッショナル向けクラウド--映画や放送業界で注目集める

大西高弘 2014年10月23日 07時30分

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 米ソニーの関連会社、Sony Media Cloud Services LLCが2013年春からスタートさせている「Media Cloud Services」(MCS)が各方面から注目されている。MCSは、大規模で大量のファイルをクラウド上で編集、コラボレーションできるサービスで、インフラ部分はすべてAmazon Web Services(AWS)で構成されている。

 このサービスは、大量の画像、動画ファイルを扱う映画、放送業界などでは、かねてから待ち望まれていたサービスといえる。撮影した映像素材などを上映、放送の段階まで進めていくには、映像や音声の編集作業が欠かせない。この作業は監督やディレクター、そして編集者だけでなく、放送や上映にかかわるマーケティングや法務などさまざまな部門の目を通していく必要がある。編集していく過程での作業そのものの管理も大変だが、すばやく多くの担当者と仕事をするために、これまでも多くの企業が苦労をしてきた。

Sony Media Cloud Services LLCのBen Masek氏
Sony Media Cloud Services LLCのBen Masek氏

 例えば、これまでは映像素材などをデータセンターやクラウド上に置いて、各担当者がデータをダウンロードし、それぞれのオンプレミス上のシステムで作業や確認をするというのが常識だった。大手の映画会社や放送局では、映像に目を通すスタッフが1カ所に集まって仕事をしていることはまずない。グローバルで各地の拠点で仕事をしている。それらの人たちが各人各様に1つの映像素材に対してコメントしながらコラボレーションを進めていくわけだが、これを整理して、正確にバージョン管理をしつつ完成させていくのは、常に細心の注意が必要になる。なにより時間がかかるという。

 MCSは、クラウド上で映像のラフカット編集をコラボレーションしながら進めることができる。複数のスタッフが最新の編集状態の素材を見ながら仕事を進めることができるので、完成までの時間を大幅に短縮することができるという。

 ソニーは、無線LAN対応のビデオカメラを開発しており、撮影した映像をカメラからMCSにアップロードするということもできるとしている。

映像会社のシステムインフラを支えてきた経験を新サービスに

 このサービスを開発した中心メンバーであるBen Masek氏はエンジニアとして映画、放送会社などでキャリアを積んできた人物。映画『タイタニック』のビジュアルエフェクト用のアプリケーション開発などの経験もあるという。2003年から米Sony Pictures Entertainmentに入社し、2013年からSony Media Cloud Services LLCに移り、現在は同社の最高情報責任者(CTO)を務める。

 Sony Media Cloud Services LLCは、もともとMCSを事業化するためにSony Pictures Entertainment内でインキュベートされた組織で、事業化のアイデアを思いついたMasek氏は、MCSがスタートする前段階からSony Media Cloud Services LLCにかかわってきた。

 Masek氏がMCSの原型となるアイデアを発想したそもそものきっかけは、自身の業務からだった。Masek氏は、Sony Pictures Entertainmentで業務システムのインフラ構築と運用を担当していた。社内ユーザーから寄せられるさまざまな要望に応えながら、複数の映像作品の編集作業を支えるITインフラの安定稼働を支えてきた。

 「データセンターを活用して最適なインフラを構築することと、日々寄せられるユーザーからの要望に応えるための作業に忙殺されていました。そんな中、同業他社や当時の顧客も同様ことで悩んでいることが分かったのです。もっと簡単にシステムキャパシテイを確保でき、コラボレーションを素早く進める仕組みはないものかということです」とMasek氏は語る。

 オンプレミスのシステムでの作業に依存しない、新しい仕組みを考えるうちに、クラウドの活用を思いついた。2010年ころのことだ。アイデアとしては悪くないとMasek氏は考えたが、当時はまだ本当にできるかどうか懐疑的だったという。

 「自分自身、相当苦労しながらインフラ整備を行っていました。そのせいもあり、Amazonの話を聞いても『本当にそんなことができるのか』という気持ちでいました。しかし、実際に科学的な検証をしてみればはっきりすることだと考え、他のさまざまなサービスと同様にAWSで実証実験をしました」

 すると、他サービスよりもAWSが処理能力とコストの両面で優れていることが分かったという。

 こうして、AWSのサービスをフル活用したIaaS、そして高度な編集、ストリーミング、管理機能などを備えたPaaS、エンドユーザーに的確なツールを提供し作業環境を提供するSaaSという3つの階層からなるMCSが稼働することになった。ちなみにMCSは、ISO27001を取得しており、米映画協会のセキュリテイ基準にも準拠している。

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