本記事では、最近公開された複数の調査結果や研究レポートを読み解き、業務のデジタル化に関する見解と現実がどれだけ一致しているのかを考察する。
Spiceworksの「State of IT 2014」
テキサス州に拠点を置くITプロフェッショナル向けのネットワークサイトであるSpiceworksは2014年5月、IT部門のプロフェッショナル1121人を対象に調査を実施し、「The State of IT 2014」(IT部門の状況--2014年版)というレポートをまとめている。調査対象者は北米地域(698人)と、欧州/中東/アフリカ(EMEA)地域(423人)に分類され、さまざまな業種(上位10業種は製造とITサービスプロバイダー、教育関連、非営利団体、ヘルスケア、金融関係、政府関係、建設業、小売業、ソフトウェアとなっている)を網羅している。
Spiceworksの調査によると、IT部門の平均的な予算は25万3389ドルであり、2015年に予算の増額を計画しているIT部門は42%、現状維持が28%、削減を計画しているのは16%だという。IT関連の支出を従業員1人当たりにすると平均では、従業員数が19人以下の零細企業における2770ドルから、500人以上の大企業における698ドルまでの分布となっている(平均は1526ドル)。
企業向けITの世界が複雑化しているにもかかわらず、ITプロフェッショナルたちは増員を急いでいるわけではない。同調査によると、IT部門の要員数は平均で4.2人(北米地域で3.7人、EMEA地域で4.4人)となっており、大企業(従業員数500人以上)の11.9人から中規模企業(従業員数250〜499人)の4.8人、小規模企業(従業員数250人未満)の3人未満という内訳になっている。また、2015年に要員の追加を計画しているのは3分の1未満(28%)であり、現状維持が60%、削減は4%、まだ決めていないが8%だったという。
IT部門の予算と要員数を決定付ける力の存在は、Spiceworksの2014年の調査でも明らかだ。クラウドを採用している企業の割合は全体で61%と高く(北米地域で65%、EMEA地域で56%)、従業員数が250人未満の企業で特に顕著となっている。また、クラウドサービスの最も一般的な用途はウェブのホスティング(80%)や電子メールのホスティング(58%)、生産性ソリューション(51%)であり、向こう6カ月間のIT部門の計画ではオンラインバックアップと復旧を筆頭に、生産性ソリューション、インフラのホスティングが上位に挙がっている。
仮想化技術の採用は全体で74%(北米地域で71%、EMEA地域で79%)となっており、従業員数が500人以上の大企業では90%に達し、20人未満の零細企業における54%と比べると好対照をなしている。スマートフォン(74%)とタブレット(63%)の普及率は予想通り高く、企業の規模に比例している。最後に、BYODは68%の企業でサポートされており、零細企業(従業員数20人未満)が最も積極的(83%)であった。BYODをサポートしている企業に持ち込まれているデバイスで多いのはスマートフォン(60%)であり、その後にタブレット(51%)とノートPC(38%)が続いている。